2019年に読んだ本の一言感想(紙の本編)

Hiroki Kaneko
4 min readDec 8, 2019

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FACTFULNESS/ハンス・ロスリングほか著

人類は時代とともに貧困や暴力を脱出しつつある。その証拠が数字で出ているのに信じないのは単なる思い込みである。ロスリングから全人類への遺言。

現代政治理論/川崎修ほか著

大学の教科書。どこかの誰かが「京都大学のテキストはこれを種本にしている。これを読まないで政治を語るな」みたいな事を言っていたので。ほとんど全部既知の内容だったかな。「明確な答えが出ないものを政治問題という」

モラル・トライブズ/ジョシュア・グリーン著

2019年のベストかもしれない。人類の歴史のほとんどは狩猟採集生活のむら社会だった。人類は、ムラにおける個人対集団の利害を瞬時に調整するためのモジュールが組み込まれている(速い道徳)。しかし人間の道徳的本能はそれほど道徳的ではない(敵は悪魔であり殺しても構わないと思うなど)。エビデンスベースでゆっくり考えると速い道徳が理屈に合わないことが分かる(遅い道徳)。現代社会は国家間問題(集団対集団)を抱え、これには「道徳的直感=速い道徳」では対処できないし、異なる宗教の信者は異なる道徳基準を抱えているので共通言語が無い。その時には功利主義的に考え、エビデンスベースの議論が有効になるだろう。というか、それしかない。
とんでもなく深い議論だった。功利主義で進化を出し抜けよ人類、と思った。有名な「1人を殺して臓器移植をして5人を助けるべきか?」問題について、私の速い道徳はNOと言っている。しかし功利主義ではYESではないのか?

社会はなぜ左と右にわかれるのか/ジョナサン・ハイト著

左派学者・ハイトが右派の考えに進化心理学的観点から歩みよろうと試みる。左派は「神聖の味覚受容体の無い舌を持っている」と言われても神なんかいねえし、「神聖」と思うように脳が設計されていたとしたらそんなものは意味がない。では意見が異なる両者はどうすればよいのか?「歩み寄れ」では解決にはならない。歩み寄れないから問題なのだ。そこを超えるのはグリーンの「功利主義でエビデンスベースで考えるしか無い」となる。

<わたし>はどこにあるのか/マイケル・ガザニガ著

お硬い本で、読めるかどうか心配だったけど著者のユーモアあふれる語り口で面白く読めた。脳のモジュール仮説を信じるようになった。

ヤバい経営学/ヴァーミューレン著

ヤバい経済学と間違えて買ってしまった。でも面白かったよ。

百年の孤独/ガルシア=マルケス著

本編より日本人作家による解説の中二病臭さが参った。何が「国産みのダイナミズム」だ。どういう意味?中学校の夏休みの読書感想文なら満点だ。いい年して中二病は恥ずかしいしこれがプロの文章か?

超ヤバい経済学/レヴィット著

地球温暖化?なら上空に火山性物質を撒いて地球を冷やそうぜ!このクレバーさ。21世紀には、このあたりが人類の希望になるのでは。

0ベース思考/レヴィット著

日本人の大食いチャンピオンがホットドッグ早食いコンテストで採った方法は、それまで誰も試したことが無かった。しかし今では常識になった。あーいかにもレヴィットが好きそうなクレバーな奴ら。

ヤバい経済学/レヴィット著

イグノーベル賞スレスレの問題に興味を持つ異色の経済学者が大相撲の八百長から、「1990年代にアメリカで犯罪発生率が低下したのは妊娠中絶が原因だ(望まれない子が生まれなかったため、不幸な子が成長してグレて犯罪を犯す事も無くなった)」というのは非常に説得的だがアメリカを二分する政治問題に足を突っ込んだ事になる。この著者にタブーなど無い痛快な本。

だれもが偽善者になる本当の理由/クルツバン著

進化心理学の重要な本のような匂いを感じたので只今読書中。

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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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