2晩連続で同じ場所でカゲロウを見た

Hiroki Kaneko
Jul 7, 2021

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写真中央にピンぼけのカゲロウがいる

残業で疲れて、東京駅から電車に乗ると、窓に張り付くカゲロウがいた。
私は疲れ果てていて、本を読むきにもなれず、一日中バックライトで照らされる画面を見ていたのでスマホを見る気にもなれず、ただそのカゲロウを眺めていた。
こいつは大都会東京で生まれたのだろうか、それとも始発の車庫か、終点の熱海か伊東で羽化したのだろうか。
どこかの水辺で生まれ、羽化して、どういうわけか電車で100km以上を移動することになったカゲロウ。
私が電車から降りた後、こいつにはどのような運命が待ち構えているのだろうか?どこの停車場で夜を明かすのか、朝になったらどうなるのか。

翌日の晩、やはり疲れ果てて東京から電車に乗ると、また窓にカゲロウがいた。昨晩と同じ、窓の真ん中だ。
これは昨晩と同じカゲロウだろうか?それとも別のやつだろうか?
同じカゲロウなら、一日中電車に揺られていたのか。求愛の相手を見つけることもなく、電車に乗って一生終わるのだろうか。明日の朝日は見られるのだろうか。それが人生最後の一日なのだろうか。

命は、頼んでもないのに生まれ
恐ろしい世界に放り込まれ
生まれた時から決められただけの寿命を
生まれた時に決まっていた能力を使って、なんとかやっていくしかない
外の世界には恐ろしい敵が
巨大なサルが作った鉄の乗り物が
想像もつかない距離を移動する
しかし求愛の相手には出会えず
疲れ果てた巨大サルと同じく運ばれ
明日の朝日は見られるかもしれないが
それが人生最後の日になる

命は…と考えていたら下車する駅になったので、降りた。
次の日からカゲロウは見ていない。

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Hiroki Kaneko
Hiroki Kaneko

Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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