BROMPTONメンテナンスブック
おそらく日本語で書かれた本としては初めて、ブロンプトン専門のメンテナンスブックが出ました。今まで「折りたたみ自転車」というカテゴリーでブロンプトンのメンテナンスも載っている本は幾つか刊行されたと思いますが、今回はブロンプトン専門ですから、どれほど濃い内容の本なのかと期待が高まります。また、1990年代からブロンプトンを販売していることで多数のメンテナンス・ノウハウを持っているであろう販売店、杉並の和田サイクル監修というのも、内容の正確性についての信頼度向上に繋がります。
メンテナンスを解説している作業は…(目次より抜粋)
デイリーメンテナンス
タイヤの空気圧チェック
乗車前チェック
サドルの高さの調整
洗浄および注油タイヤ/ホイール
フロントタイヤおよびチューブの外し方
フロントタイヤおよびチューブの取り付け方
リアホイールの外し方
リアホイールの取り付け方(内装変速の調整)ハンドル/サドル/ペダル
ハンドル周りの調整
サドル周りの調整
ペダルの着脱ブレーキ/変速/チェーン
ブレーキレバーのリーチアジャスト調整
インナーケーブルのテンション調整(ブレーキレバー側)
インナーケーブルのテンション調整(ブレーキ本体側)
ブレーキキャリパー(本体)のセンタリング
ブレーキシューの交換
外装変速用ディレイラーの交換
チェーンの交換エクストラメンテナンス(販売店に持ち込み推奨)
ヘッドパーツの交換
BBの交換
ホイールの交換
ケーブル類の交換ブロンプトンEバージョン化カスタマイズ
必要最低限といったところでしょうか?この本ではカスタマイズは推奨していないようで、最後に泥除けなどを取り払ってEバージョン化する方法のみ書かれており、内容の薄さに少し不満があります。
良かった記事
イヤーモデルの細かな差を理解したこと。30年間モデルチェンジをしていないと思いこんでいたブロンプトンでしたが、細かな年次改良の他に、過去に3回のフルモデルチェンジを経て、今はMk.4と呼ばれているとは知りませんでした。しかし基本的な構造は何も変わっていません。
足りなかった記事
外装ディレイラーの調整は記事として存在しますが、内装変速ワイヤーの調整方法は書かれていません。基本的にメンテナンスフリーだからでしょうが、私の場合、半年間で2回、変速のワイヤーが外れた(切れたわけではない)ので、自分で調べて直しました。YouTubeに多数のHowToビデオがあり、長期的にはこれらメンテナンス・ノウハウを知るには紙の本よりもビデオの方が分かりやすいので優勢になるかと思います。「ネクタイの締め方」って、図で説明されるよりもビデオで見たほうが分かりやすいですよね?
ほしかった記事
- 豊富な純正・社外パーツの解説
- ブロンプトン互換自転車の性能は?試乗レビュー「買って・乗ってみた」
- 電動アシスト付きブロンプトンの試乗レビュー(イギリスで)
- 乗車歴10年以上のブロンプトン乗りに聞く:
- 保管方法(保管場所、駐輪場所、盗難防止ワイヤーなど)
- 壊れやすい箇所等など維持ノウハウ
ここまで濃い記事を載せてこそのブロンプトン専門ムックだと思うのですが、どうでしょうか?
とはいえ、日常メンテナンスから、ブレーキ、チェーン、タイヤの交換方法まで解説しているなら、この一冊でブロンプトンを維持することはできるんじゃないかと思います。
ブロンプトンの正規販売店は東京など大都市圏に偏っており、また通販しないポリシーでもあるので、県内にブロンプトンの正規販売店が無い地域でブロンプトンを見かけると、目で追ってしまいます。そのような場所に住んでいる以上、メンテナンスは自分でやるしかないのでこの本は役に立つでしょう。
随想
ブロンプトンも、日本で売価10万円なら「自分でメンテナンスしつつ一生乗り続けて元を取ろう!」とか言いたいのですが、20万円もするのに実用車だと言われてもね…。折りたたみ機能さえ我慢すれば、もっと乗りやすくて安い自転車はいくらでもあるので…。
やはり台湾か中国に自社工場を作るべきかと思います。それまでは、ブロンプトンは実用車などではなく、自転車オタクのペットでしかありません。いやー、だって、美しいじゃありませんか!メインフレームが猫背のように曲がっているのも、それが意味なくそうしているわけではなく後輪を下に折りたたんだ際に、タイヤが接触しないように丸く曲がってるんです。すべてのパーツは走行時と折りたたみ時に接触しないよう、まるで3次元のパズルのように考え抜かれていますし、すべてのデザインには意味があってそのような形になっているというのは、これぞ機能美ではないですか?2020年現在、市場にはブロンプトン方式の折りたたみ以上のよく出来た折りたたみ機構を持つ自転車がないのですから、まさに大発明です。
折りたたみ機構がブロンプトン最大の発明なら、2番目の大発明はキャリアブロックでしょう。メインフレームにマウントされる専用のカゴは、ママチャリでよくある「荷物を積むとハンドリングが重い」とは無縁です。これ、折りたたまない普通の自転車にも付いてほしいくらいです。専用のカゴは必要になりますが、メーカーの皆様におかれましては、そこはビジネスチャンスだと思ってください。
このような「小さな大発明」を次々と生み出しているブロンプトンは、大きなモデルチェンジをしないからといって何もしていないわけではなく、常にパーツの1つ1つを今より良くするためにはどうしたら良いのか、考え続けているからこそなのだと思います。それは年次改良によって細かな、しかし大きな使い心地と耐久性の向上を続けていることからもわかります。
言っても仕方がないこと
16インチタイヤは小さすぎます。20あれば特にタイヤサイズは気にならなくなると思うのですが、それだと折りたたみ時のサイズが大きくなってしまうので、現実的ではないでしょうね。小さいタイヤの何が嫌って、街中の細かな段差にも気を使わなければ転んでしまいそうになることです。あと、空気が抜けやすいので毎週のように空気を入れています。BD-1のように18インチにサイズアップすればあるいは…しないでしょうけど。
ブロンプトンばかり乗り続けて、たまに700cの自転車に乗ると「あれ、タイヤの空気が抜けているのかな?」と思うほどハンドリングと漕ぎ出しが重いと感じます。