お前は’60年代の人間か?地獄のYouTubeコメント欄:映画「グリーンブック」を見る
Amazon Prime Videoに薦められる映画しか見ない私。自分の意見というものがない。
舞台は1962年代アメリカ(公民権運動が最高潮を迎える数年前)。黒人ピアニストの運転手として雇われたトニーとめぐる南部諸州でピアニストは様々な差別に遭い…と、予想できるストーリー展開。実話ベースの映画で、題名は当時発行されていた「黒人ドライバーのためのグリーンブック」という有色人種も利用できるホテルやレストランが書かれたガイドブックから。
深南部のアラバマ州のクリスマスパーティーで演奏することになったドクターは、黒人であることを理由にパーティー会場内のレストランの来店を拒否されてしまう。ここで食事ができなければ演奏しないと言って会場を立ち去るのだが、パーティーの予定が台無しになってしまうと支配人が彼に言った捨て台詞が「演奏は契約だぞ、約束を守らない、黒人はそんなことだから仕事がないんだ!」だった。
当時の黒人たちに仕事がなかったのは、契約を守らないからでもなく、怠け者だからでもなく、アメリカ白人社会が黒人の雇用を拒否したからだ。
拒否された黒人たちは仕事がないので家か外でブラブラするしかない。それを見た白人は「黒人は怠け者だから仕事がないんだ」と言って雇用を拒否し、その結果ブラブラしている所を見た白人は、黒人のことを怠け者だと…と負のループになってしまっていただけだ。
当時の人間はバカだったから、上記のような社会構造になっていたことに気づかなかった。未だに気づいていないやつもいるだろう。
戦後になって、遺伝子の知見が深まり、人間は数種類に分かれていると思ったら実は驚くほど遺伝的な多様性が無いほとんど均質な存在だったことが分かった(7万年くらい前の火山噴火による気候変動でホモサピエンスが絶滅寸前だったらしいことと、結局アフリカ以外在住の人類は出アフリカした小規模集団の子孫である、というので)。
それでもなお60年代は依然、ナチスまがいの白人至上主義が幅を利かせ「人種」というものが存在すると誤解されていた。
文明が発達した要因も、そのような「人種による能力差」ではなく単純に住んでいる地域の動植物相の条件に過ぎなかったことが分かるには、ジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」の出版を待たなければならなかった。
今、分かってるじゃない、そういうこと。でもYouTubeの、アメリカのドキュメンタリー番組、それはアメリカ大都市部の貧困地区に住むチンピラだがギャングだかが、入団の儀式として新入りをリンチするというものだったのだけど、それを見た日本人と思しき視聴者がコメント欄に「すぐ犯罪に手を出す黒人にも問題がある」的なことを書いてるんですよ。え?いま2021年だよね?何言ってるの?
Yahoo!ニュースのコメント欄も地獄だが、YouTubeのコメント欄も、まあまあ地獄だ。金さえ出せば、しょうもないスマホのしょうもないアプリでYouTubeなど見ることができ、「ギガが減る」と謎のセリフを吐きながら(お前は牛乳を飲んだら「リットルが減る」というのか?)書いたのだろう。
これだけ遺伝子の知見が溜まった2021年に、なぜそれを言えるのか全くわからない。すげえな、これが「客層が悪い」というやつなのか。
映画は、まあ普通でした。