かがり火

Hiroki Kaneko
Dec 10, 2023

--

夕暮れの帰り道、川の近くを歩いていたら、小柄なおじいさんがずっと川を見ていたので、「このおじいちゃん大丈夫かなあ…」と思っていた。何も言わずに通り過ぎようとしたら、そのおじいちゃんが私に声をかけてきた。

「(川を指さして)あれは、かがり火ですか?」
「いいえ…橋の上の街路灯が水面に反射しているだけですね。」

それでもおじいちゃんは「あれはかがり火なのではないか」と思っている様子だった。
ここまで書くと、そのおじいちゃんの認知症の進み具合を心配してしまうのだけど、会話をしていて受け答えは極めてはっきりしており、それは脳が悪いのではなく目が悪いのでは、と感じた。

「いや…鵜飼いが有名なのはもっと西で、関東では聞いたことがないですね…」

「そうですか、どうもありがとうございます」

「いえいえ、楽しかったですよ」

あのおじいちゃんは認知症ではなく、詩人なのだと思った。

知らない人と話すというのは、何て楽しいんだ。日本社会で知らない人が突然話しかけてきたら身構えてしまうけど、天気の話や、思っていることを率直に話すというのはとても気持ちが良い、と思った。

そういった次第で、私は「ネット上のコミュニケーション」というものに飽きが来て、ネット上でくだらないことを書いている奴らについて、可哀想に、外に出ろよ、とますます思うようになった。

--

--

Hiroki Kaneko
Hiroki Kaneko

Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

No responses yet