ぼくのゆめはかふぇのけいえいでーす(2)
前回までのあらすじ
逆転の発想で「客が長居すればするほど店が儲かるカフェ」は既に東ヨーロッパに存在した。フランチャイズ店募集の記事を見て私はジファブラットにコンタクトを試みるも、半年待たされた挙げ句に苦労して作ったWebアプリは無視され、担当者のやる気がいまいちわからないまま話は進んでいくのだった。
事業計画書を出せ
それからというもの、先方のフランチャイズ担当者と私はEmailでやり取りをしていた。何かメッセンジャー的なものを使えば良いとは思ったものの、元々が詩人のグループだったためか?あまり新し目のICTツールを使って業務を効率化しようとか、毎日Facebook Messengerを見に行こうとか(←根に持っている)そういう動きは無いようだ。そこに!私のようなアイテー技術者のヤポンスキーが!業務を効率化するサンプルを抱えてやってきたというのにガン無視しやがって、という思いを胸にFinancial Planなど作った。初期投資額、最初の1ヶ月は約540万円必要だと見積もった:
Deposit (rent) (敷金)300,000
Municipal tax & insurance(市税および保険)0
Rent (3 months)(3ヶ月分の家賃)573,000
Furnishings(家具)1,000,000
Appliances(家電)500,000
Initial payment (初期費用)191,000
Transportation, Communication(交通費、通信費)10,000
Utility payments (3 months)(事業費)0
Tableware(テーブルウェア)100,000
Realtor(不動産業者)0
Lawyers(弁護士)132,100
Accountant(会計士)25,000
Creative team(クリエイティブチーム)505,000
Foodstuffs(食料品)141,000
Repair(修繕費)2,000,000
Other(その他)0
Total(合計)5,477,100
そして売上目標。1分10円で、80分滞在で一人あたり800円の売り上げ。1日35人来たとして、1日28,000円の売り上げ。1ヶ月30日として840,000円。
Number of visitors (per day) (1日の来客数)35
Number of visitors (per month) (1ヶ月の来客数)1,050
Aaverage receipt (平均客単価)/ 10 ¥ per minute 800
Variable costs (per person)(1人あたりの変動費)120.0
food (食費)100.0
supply (仕入原価)20.0
Franchise, %(フランチャイズ,%)5.0%
Overhead (per month), (間接費(月額))746,000
rent (家賃)150,000staff (з/п )505,000
utility (household expenses)0
utilities (電気、セキュリティ)30,000
management company (管理会社)41,000
Other (その他)10,000
Activity (活動費)10,000
Taxes (税金)8.0%
このようなテンプレートをExcelファイルとして向こうは送ってきた。私はざっくりとした数字を入れて、これをGoogle Sheetsに変換して皆が常に最新版を共有できるようにした。しかし向こうは何をするにしてもExcelファイルをメールに添付して送ってくる。オメーそれじゃ誰が最新版を持ってるか分からなくなるッツーのに何度もExcelに直して送ってくるんじゃねえよ!なんというか、まあ、20世紀のやり方だ。こちらはリモートでしかやり取りができないのに、こんなんで大丈夫なのだろうか。物件が決まったら一度、開業10日前にも一度、フランチャイズ担当者が現地を訪れて開店準備をするというのに。というかその前に私がロシアへ行って何日か店舗業務を経験しなければならないという。日本人が知らない、南ロシアにそこ店はあった。
ロストフ・ナ・ドヌってどこですか?
フランチャイジーの担当者は、ジファブラットのロストフ・ナ・ドヌ店で修行をしなければならないらしい。ど、どこですか、それ…。アゾフ海のたもと?私はロシアの地理や歴史に疎いので、そんな都市があるとは知らなかったけど、Google Street Viewで見ると、何だか良さそうな所に見えるけど。
こんな、この間まで名前すら知らなかった都市に自分が行くことになって、そこが自分の新しい生活への第一歩になるかもしれない、と想像すると、それはすごく素敵なことに思えてくる。海外留学をしたことがある人は、きっとこんな思いなのではないか。
しかし遠すぎる。日本から一番近いジファブラットは、モンゴルのウランバートルにあるらしいが、そこで研修などできないか?と聞いてみた所、養成員が居ないので駄目、ということだった。
フランチャイズ物件の要件
さらにはフランチャイズ物件に要件がある、
・人口40万人以上の都市。周辺地域の経済、交通、文化の中心であること
・大学があること
・街の中心部から近いこと
・物件の上階、下階に人が住んでいないこと
最後の条件がなぜあるのかというと、これは騒音対策であり、「明日のスターがコンサートを行うため」なのだそう。日本にコンサートやって良い物件なんてあるか?ヨーロッパによくある4階建てくらいの建物で、壁が1mくらいあってカラオケしても音が漏れなさそうな物件でコンサートをしたって苦情が来るのだ。日本の安普請、ラーメン構造の薄い壁で出来るところなど無いし、アーティスト達は、コンサートをするならなるべく音響の良い所で音楽をやりたいのだ。つまり、それ専用に設計された建物でないとアーティストも、客も、誰も幸せになれないのだけど。
私は地方都市でフランチャイズをやりたいと思っていた。都心は人が多いのでチャンスがあるものの、テナント料が高いので黒字にするのは難しいだろう。でも、もしそれが地方都市だったら?BBCニュースでも、イギリス北部で展開中と言っていたではないか(ロンドン店もあるようだけど1分あたりの料金が高く設定されているようで)。
不動産屋を通じて物件の内覧も5,6回やってみた。都市部と違って地方都市は駅前が街の中心ではない。少なくとも商業の中心ではないので、人口40万人の都市といえども駅前は人もまばら、その40万人はどこへ行っているのかというと、マイカーで郊外のショッピングセンターへ行っているのだ。なので、郊外で駐車場を広く取れる物件か、駅前でファストフード店がすくい取れない客層、つまりマクドナルドのコーヒーよりもう少し美味しいものを飲みたくて、光速Wi-Fiに繋がり、ソファーでゆっくり出来る場所、という客層もいると思うのだけど。
幾つかの物件に実際に行った時に写真を取り、モスクワへ送ったが向こうの反応は芳しくなかった。スケルトンでは改装工事にお金がかかりすぎる(ごもっとも)、マンションの2階では騒音問題が…といったところ。
そうこうしているうちにメールが来なくなった。向こうの英語もちょっと怪しいものでもあるし、私の英語はもっとずっと怪しい。コミュニケーションの問題がもともとある上に、担当者が日本の不動産、都市、商習慣などについて知らなさ過ぎる、というのもコミュニケーションを難しくさせる要因であったように思う。
最後に
私が色々動いていた2018年と比べ、この2019年は時間貸しカフェがずっと増えたような気がします。飲食店を開店させるくらいの金はあるが、話題性のため、いっちょ世界ブランドの看板をカネで買うか、と思っているベンチャーキャピタルおよび企業の皆様、ジファブラットを日本で展開したいと思っていたらまず私にご連絡ください。担当者の名前くらいは知っていますので。