まだ「絶滅への抵抗」の勘違いの匂いがする:THE BIG ISSUE JAPAN428号

Hiroki Kaneko
Apr 16, 2022

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2つの未来シナリオ――2050年のある日
今年2月末に公表された国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の最新報告書で「地球温暖化は人間の活動が原因」と明言されました。昨年11月、国連気候変動会議(COP26)の自国開催にあわせて『ビッグイシュー英国版』は、学術研究機関「UKリサーチ・イノベーション」の協力を得て、科学的予測をもとに2つの未来シナリオを描きました。あなたはどちらの世界を望みますか?

「UKリサーチ・イノベーション」というのが、どのような組織なのか私にはわからないけど、たぶんここだ。

記事では、2050年の予想が2つ書かれており、要するにこんな感じだ:

シナリオ1: かろうじて気温上昇を抑えた未来
* 肉は培養肉か代替たんぱく質が入ったものを食べる
* 労働者の80%が週3日労働で余暇をボランティアに
* 服は一生着続ける
* ライドシェアによる自動車交通量の減少
* 飛行機は液体水素で飛び、国内線は廃止された
* 人口は都市部に集中
* 地元の農家が育てた野菜が配達される

シナリオ2: 気候危機への対処に失敗した未来
* アメリカではロビイストのおかげで未だにガソリン車が多く走っている
* 肉、果物、野菜が貴重品になり、手が届かない値段あるいは乱高下する値段になる
* ファストファッションが未だに続いている
* 電気自動車は充電所が足りず多くのドライバーがガソリン車に戻る

まあ、ありがちというか、研究機関の協力を受けてこの程度のことしか書けないのかとも思う。

ちなみに培養肉などなくても大豆だけで結構おいしい「肉のような食品」はできるので、どうぞ食べてください。

シナリオ1も2もおかしくないか?

「気候変動の壊滅的な影響をかろうじて免れたシナリオ」での2050年は、飛行機による国内移動が禁止されているそうだ。
なぜ飛行機?いや、わかってるんだ。自動車による移動と比べて、1人あたりの炭素排出量が多いから問題視しているのだろう?
しかし産業別の炭素排出量で見たら、航空機産業は全体排出量の3%ですが?もっと影響の大きなところに目を向けるべきでは?
人々がもっと交流すれば、相互理解が進み、それだけ世界が平和になるのに、たった3%のために諦めるのか?3%は平和のコストだとは考えられないのだろうか?

これはまるで「インターネットがあるから、留学なる仕組みは不要であり、母国の自宅で世界中どこでもお好きな大学の遠隔授業を受ければ良い」と言っているようなものだ。
「留学」というのは、校外の活動、つまり外国で生活して、人々との交流を通じてその国の人々を深く理解することも、学校と同じくらい重要な学習ではないのか。それは観光目的の海外旅行だって同じだ。

意味がわからん。そこには「自己犠牲という<崇高な目的>によって<危機に瀕した地球>を救う」という、なかなかヒロイックかつ効果の薄い(3%)「自己満足」が感じられる。「1年間、新しい服は買わない」と宣言している連中と同じだ。スーパーのレジ袋有料化も、良かれと思ってやったことではあるが、結局私などは金を出してゴミ袋としてのプラスチックバッグを100円ショップで買っているから同じことだ。

上のようなニュース、読んでる?環境負荷の少ない燃料の開発や、そもそも飛行機自体の低燃費化などの技術革新が起きることなど一切無視して、今の状況が永遠に続くという間違った予測から「これは<持続可能>ではない」と思うのではないか。地球の人口だって100億人くらいをピークに、それから減少していく、そして技術革新が起きて人類はますますエネルギーの取り出し方がうまくなることを一切無視して、今の技術、今の人口が永遠に続くという仮定から「これは持続可能か?」と問うても無意味でしょうに。

バラバラに住むより都市部に固まって住んだほうがエネルギー消費が少ないのは確かだ。しかし都市化の問題はここでは一切書かれない。つまり都市部は家賃が高いということだ。それなのに2050年のイギリス人たちは週休3日で楽に生活できているそうな。へえ、皆がそれだけ高い給料を貰えるといいですね。何を根拠にそんなことを言えるのか。

発電については何も言わないのか

上記の円グラフを見ると、CO2排出の割合が一番多いのは「エネルギー転換部門」つまり発電所だと書かれている。まずはここを脱炭素化しなければならないだろう。そう考えると火力発電にいつまでも頼るわけにもいかず、かといって技術音痴なビッグイシュー編集部の皆様(イギリスも日本も)は知識が足りないせいで原子力発電が嫌いなので、シナリオ1に「火力発電所はすべて原子力発電所に置き換わった」とは書かない。

しかしイギリスは原子力発電に舵を切ったようだ。原発全廃目標を掲げていたドイツも、ロシアからの天然ガスを止めるというので、早晩追従するのではないか。おそらくドイツの原発全廃目標を後押ししたのは政治的にはドイツ緑の党でもあろうし、そのモチベーションも2011年の福島第一原発事故の影響を正しく評価できなかったからだろう。ドイツ緑の党は「左派大衆迎合主義(ポピュリズム)政党」でしかなく、事実やデータに基づいた政策を出していない。そのうち彼らは、手のひらを返して原発全廃目標を取り下げると思う。そうしないと有権者の反ロシア感情と産業界の要請に答えられないから。

原発ウォッチ!柏崎刈羽原発、施設支える杭が損傷

未だにビッグイシューで反原発に粘着しているバカも、もう森林資源の無駄だから連載やめろよ。「原発やめてロシアから石油を買おう!サハリン2を止めるな!」とか書けよ。

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Hiroki Kaneko
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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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