オッサンがグレタ・スピーチの妥当性チェックをする
「16歳で気候正義戦士でなければハートがないし、46歳で気候正義戦士なら脳がない」という言葉が頭に浮かんだ。
これが四半世紀前だったら私は「彼女こそ地球を救う気候正義戦士だ!」と思った所だろうが、私はそこまで脳のない46歳(いま42だが)にはならなかった。残念だ。
彼女のスピーチ全文、ビデオも訳も見たけど、具体的にじゃあどうすればいいの?というところにまるで触れないまま「大人が悪い。約束を守れ」と連呼しているだけなので、彼女は本当に地球温暖化問題、気候変動問題が解決しない理由について理解しているだろうか?という疑念が湧いた。
気候変動問題への対応が遅れている理由を、彼女はそれを善か悪かの道徳問題にしてしまっているのが、まずいよなあ、原因を見誤ったら、問題は解決しないのだけど…。
私は今、この壇上にいるべきではありません。私は海の向こうで学校に行っているべきです。
他人のせいにしてはいけない。責任あるティーンエイジャーなら堂々と「私は学校よりも気候変動のほうが重大な問題だと思ったから自分の意志で学校を抜け出してきた」と言わなければ。
多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。
全ての生態系が破壊されているわけではない。大量絶滅云々に関しては、そうではない証拠が集まりつつある。
追記。先進国に関しては自然保護区の拡大と動植物の絶滅のスピードは減りつつあり、種によっては個体数が回復しつつある。この動きは中進国も途上国にも広がりつつある。といっても依然、絶滅危惧種が沢山いるのは事実。何もしなくても良い、という意味ではない。
それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!
「経済発展を止めれば気候変動問題は解決する」という根拠のないおとぎ話を弄ぶべきではない(既に排出されたCO²はどうなる?等)。そんな事言うから保守系メディアに「左翼の大人にたぶらかされている」とか言われるんだ。トランプ信者のFOXニュースに図星を指されてるんじゃねえよ。
「人間の強欲により地球の純潔が汚されている」のような世界観では問題は解決しない。技術が起こした問題は技術が解決する。
30年以上にわたって、科学ははっきりと示してきました。それに目をそむけて、ここにやって来て、自分たちはやるべきことをやっていると、どうして言えるのでしょうか。必要とされている政治や解決策はどこにも見当たりません。
「炭素排出権取引をちゃんとやれ」だけでよい。これが有力な政治的解決策。それ以外については政治問題ではなく技術問題だ。解決策は既に出ている。産業全体を脱炭素化することだ。それをどのようにするのか?で議論している段階であり、「どこにも見当たらない」というのなら、見ている方角が間違っているのだろう。
なぜなら、もしあなたたちが状況を理解していながら行動を起こしていないのであれば、それはあなたたちが邪悪な人間ということになるからです。私はそれを信じたくありません。
技術問題を道徳問題にすり替えてはいけない!これは善か悪かの問題ではない!「昔、人類はエネルギーの取り出し方が下手だった」というだけの、単なる技術上の問題である地球温暖化問題を、道徳問題や政治問題にすり替えるから解決が難しくなってるんだ。
あなたたちは、私たちを失望させている。しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。未来の世代の目は、あなたたちに向けられている。
残念ながら、この議論では、未来の世代も今の世代と同じ的外れの政治に終始してしまう。なぜなら世代が変わろうと人間は人間であり、気候変動問題の原因…は炭素などだが…ではなく人間による解決が遅れているのは…↓
結果論として有害だった
- ゴアが「不都合な真実」によって地球温暖化問題に左派のレッテル貼りをしたので右派の協力が取り付けられなくなった(結果論)
→技術問題を政治問題化するな - オバマが2期8年もアメリカ大統領を勤めてしまったので、その反動としてトランプが大統領になり、環境問題への対策が後退した(結果論)
→左派はポリコレ警察に堕するな。右派のガス抜きもしてやれよ。反動が怖い
ゴアもオバマも、世のため人のために良かれと思ってやったんだけどね。結果として「やらなかったほうがマシ」になってしまった。これが反動の怖いところで、突き進めば進むほどその反動も大きくなる。グレタも分かって活動してるんだろうな???
右翼も左翼も的外れ
- 右派の主張は「地球温暖化問題は起きていない」だが、歴史の偶然によりこのウソが右派を団結するシンボルになってしまった。自分は右派だと自認する場合、本来政治とは関係のない技術問題であった地球温暖化問題に反対することで団結をディスプレイする
→最終的に自分を含めて皆困るのにそれに気づかない愚かさ - 左派の主張は「人間の強欲により地球の純潔が汚されている。経済成長を止めなければ皆黙示録へ向かってまっしぐら」。これは政治的主張というより科学的根拠のない、既に宗教になってしまっている。技術問題は宗教では解決できない。原発はカーボンフリーといくら言っても受け入れない。
→「昔に戻ってエコな生活」くらいじゃ問題は解決しない。既に相当量のCO²を排出してしまったからだ。
グレタと同じスウェーデン出身のロスリングによる、世界を正しく見る習慣。
妊婦の死亡率に詳しい専門家の中でも、トンカチとくぎのことわざを理解している人には、貧しい母親の命を救うには何がいちばん有効化が見えている。それは看護師を訓練して帝王切開をすることでもなければ、出血多量や感染症に対応することでもない。妊婦の命を救うには、地元の病院への交通手段を整備することがいちばんだ。病院が合っても妊婦がそこにたどり着けなければ、何の役にも立たない。救急車もなく、救急車が通れる道路もなければ意味がない。それと同じで、いい教育に必要なものは、教科書をたくさん与えることでも教師を増やすことでもない。学びにいちばん大きく影響するのは、電気だ。電気があれば、日が暮れたあとに宿題ができる。
FACTFULNESS ハンス・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著、 上杉周作、関美和訳
問題を解決するには一見、直感に反することでも理性と証拠に照らし合わせて適切であろうと思われる、解決の道を採用しなければならない。妊婦を救いたければ道路整備をしろ。教育を普及したければ発電所を作れ。気候変動問題を解決したければ黙示録的な妄想を喚き散らすのではなく、炭素排出権取引を推進する政治家に投票しろ。脱炭素化を進める企業に投資しろ。それが解決の道だと皆に分からせるには?→あなたが統計学の教師にでもなればいい。
しかしあなたの頭の中には「人間の強欲(略)黙示録まっしぐら」という疑似宗教イデオロギーがあるので、それでは問題は解決しない。なぜならその問題への解決策が「自己犠牲」止まりになってしまっているからだ。
自己犠牲というのは、人間にとって魅力的な選択肢であるらしい。これは進化的な理由があり、自部族内で公共財を巡る不公平があった時に、利他的行動、自身の正しさをディスプレイすることで周囲の信頼を勝ち取るのだ。イスラム教では自分を傷つけるイランの祭りや、フィリピンのキリスト教では自分の手に釘を打ち付ける祭りがある。その他にも家畜を殺して神に捧げる犠牲など…全て何の意味も無い無駄な行為だが、これら全ては人類が何百万年も自集団内で村民たちとうまくやっていくために進化・適応した脳が起こす「自分の正しさディスプレイ」の副産物だ。
これらは全て、自身の正しさを周囲にディスプレイするために、自己犠牲という戦略をとっているのだ。気候変動問題を善か悪かの道徳問題にすり替えってしまっていては、その解決策は自ずと「自身の正しさのディスプレイ=自己犠牲」となるだろう。それで問題が解決すると思っているのか?
はい、自己犠牲ご苦労さん。次は断食月(ラマダーン)でもやろうか?
わたしたちはまだ、地球の未来のために若者たちがなしうる成果のほんの始まりを目にしているにすぎない。皆が協力し合ったとき、いったいどんなことをやってのけるのだろうか。
馬鹿の考え休むに似たり。
やらないよりやったほうがマシかもしれないが根本的な問題解決にはならない。一番怖いのは、この程度の自己犠牲、いわば「大海の一滴」で地球規模の問題が解決すると思っているのなら、実はかえって有害ではないかと思う。グローバル問題に対してローカル対応をしてしまっているし、それで問題が解決すると…自集団への対応方法しか知らない脳は錯覚する…ことが問題なのだ。
汝の内なる声を無視せよ
直感に従うからおかしなことになる。直感はそれが生き残るのに有利に働いたから脳に組み込まれているのであろうが、狩猟採集時代には有利だったものが、国家間、地球規模の問題の解決に使おうとするからおかしなことになる。もう、そんな古い道具では新しい問題には対応しきれない。右派の直感は「我々のグループのボスが、気候変動は起きていない、と言っているから、今後もボスからおこぼれをもらうために従おう」だが、結局最後には周囲も自分も被害を被るので、この直感は有害である。
左派の直感は「人間の強欲(略)」だが、上記の通り「自己犠牲により自分の正しさをディスプレイし、周囲からおこぼれをもらおう」としても無駄だ。
これらの直感は、問題があなたの家族から親類縁者、自部族ぐらいの規模で起きた問題なら従ってもよいが、それが国家間、地球規模の問題になった時、お前らの原始的な「直感」で問題を解決できると思うなよ。