ルール厨:そんなことはどんな愚か者にだってできるし、じっさい愚か者は大抵そうする

Hiroki Kaneko
5 min readApr 19, 2020

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Photo by Macau Photo Agency on Unsplash

デール・カーネギー*1の本の何が好きって、以下の言い回しである:

“そんなことはどんな愚か者にだってできるし、じっさい愚か者は大抵そうする”

この言葉はカーネギーが作り出したのか、それとも英語圏では、アメリカでは、本が書かれた時代ではごく一般的な言い回しなのかはよくわからない。何にせよ、行動規範を自覚しないで感情の赴くままに生きることの愚かさを表した良い文だと思う。この文を読むと、はっと自分を振り返って襟を正す思いがする。

腹が立ったから怒った。

“そんなことはどんな愚か者にだってできるし、じっさい愚か者は大抵そうする。”

郵便局の列で、「社会的距離」を取らずに並んでいた人がいたので、外野が注意した。

“そんなことはどんな愚か者にだってできるし、じっさい愚か者は大抵そうする。”

「自粛」を知らないのか、とババアは言った。

“そんなことはどんな愚か者にだってできるし、じっさい愚か者は大抵そうする。”

出ましたルール厨。
それを言うなら「社会的距離」だろうがババア。日本人のように見えるが、日本語の意味も知らないのか。
毎年世界中で50万人が交通事故で死んでいるのにそのことには一言だって言及しないくせに。
毎年世界中で80万人が自殺しているのに、悩んでいる人に一言だって優しい声を掛けたことがあるのか?
毎年世界中で700万人が大気汚染で死んでいるのに、コンビニへ行くようなクソ用事でいちいち車に乗るアホな地方民に「自粛」だ何だと同じ罵声を浴びせたことはあるのか?(ここは30分に1本、たった2両のJR線がガラガラな地方都市です)
毎年世界中で960万人が癌で死んでいるのに、癌のリスクを高める行為を止めさせたことなど一度もないくせに。

統計も数字も確率も知らない奴は黙ってろよ。ルールはそれを破ったら迷惑する人がいるからルールがあるわけで、行列の後ろに立ったからといって、それが何だと言うんだ。新型肺炎がうつる?雷に打たれて死ぬ確率とどっちが上かね?

ルール厨はルールさえ守れば、そのルールが何のためにあるのかは考えない。年長者が、長老が、国王が、教祖様が、神が殺せと言うなら殺す奴らだ。それがどのような意味を持つのかまでは考えない。
ルール厨は何も考えていない。であるなら、それは本能である。本能が、生まれたときから脳に組み込まれているのであれば、それが本人にとって何らかのメリットがあるからだ。しかし、その本能が出した答えが真実であるかどうかは別問題だ。あなたが自称イスラム国の戦闘員だったとして、敵を殺せば教祖様はお喜びでもあろうし、組織内でのあなたの地位も上がって、異教徒の女を奴隷としてあてがわれるだろうが、たとえあなたがハッピーだったとしても、世界全体の幸福度は上がらない。本能は世界全体の幸福度などは考慮しないからだ。

数百万年前、2人の幼い兄弟がいた。兄は親からの「川のそばで遊んではいけない」という言いつけを守らず、川のそばで遊んだので、溺れて死んだ。一方弟は親の言いつけを守ったので死なず、成長し、子孫を残した。私達はその弟の子孫だ。

権威や常識に無分別に従えばそれで良いと考えているルール厨は、人類数百万年の歴史の中で、それでなんとか生き延びられた。しかし当時と違い、「コインの裏か表か」でどちらか一方に賭け続けて勝率50%で勝つ戦略、といった方法より勝率の高い方法を知っている。それが科学ではなかったのか?真実は時に表でもあり裏でもある。
ルール厨は人間の本能のみに従う反動だ。反知性主義への揺り戻しだ。

そんな奴らには「(自分で物事を考えないので)テメエ、脳ミソ付いてるのか?」と嫌味の一つでも言ってやりたいが、ルール厨の振る舞いそのものも、人類数百万年の歴史が作り上げた狡猾な仕組みであり、巧みな脳の戦略だ。
ルール厨は、自分は自部族内のルールを守り、それを守らない他人を非難することで、自分の正しさを自部族に対してディスプレイしているのだ。その結果、自部族内で自分が大切に扱われ、生き延びることができる報酬を得る。その戦略で数百万年、生き残ってきたのがルール厨だ。

くだらねえ。ここまで科学が人間の本性を解き明かしたのに、まだ本能に従うのか?

“そんなことはどんな愚か者にだってできるし、じっさい愚か者は大抵そうする。”

このクソ下らない“猿の本能”は、義憤とか正義だとか呼ばれているようだ。コインの表裏、どちらか一方に賭け続けているだけの「バカの一つ覚え」の癖して、それを自己正当化して「義憤」だとか「正義」だとかいう言葉に酔い、真実から目をそらす仕組みまで進化というものは人間の脳に組み入れてしまったのだ。なんと狡猾な!まるで映画「ターミネーター4」 に出てくるマーカス・ライト(自分は機械ではなく人間だと認識するようプログラムされたターミネーター)のようではないか。もし神が人間を作ったのだとしたら、こんな非道い仕組みを作った神は100%悪だろう。

人に間隔を開けて並ばせたいのなら、やるべきことは非難ではなく「どうしたら人がそれをしたいと思わせられるだろうか?」と問うことだ。

*1 アメリカの鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーとは別人です。

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Hiroki Kaneko
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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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