不登校者のための人生サバイバル・キット(教養編 2時間目 世界史3)

Hiroki Kaneko
7 min readSep 16, 2019

--

Photo by Giammarco Boscaro on Unsplash

私が「サピエンス全史」で特に強調したかった「虚構に沿った社会の固定化」については上記記事に書いたので読んでほしい。その後、本書は宗教や科学革命についての言及がなされるが、私が読んでほしいと思っている箇所ではないので軽く説明するに留める。

宗教という超人間的秩序

著者は宗教と貨幣や帝国を同列に並べ、それらは人類を統一する三つの要素であると考える。帝国はその範囲が広がるほどに脆くなる。例えばモンゴル帝国が拡大し、最大版図から数百年立つと統治の及ばない周辺部から分離・独立してしまう。
通貨も、それを使う人々が「こんなコインや紙切れには価値がない」と思った瞬間に無価値になってしまう。それらは為政者が定めた「法」に民衆が従うかどうかに掛かっている。
それでは宗教はどうだろうか。宗教は上記2つと同じ虚構でもあるが、それらと違うのは、人間の規範は誰か気まぐれな政治家の思いつきではなく、人間を超えた存在によって最初から永遠に決められているのだ。だからこの法は今後も変わることがないと主張する。

したがって宗教は、超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度と定義できる。
位置№3984

その後は多神教と一神教の説明、そして「この宇宙は善と悪との戦いの結果である」とする二元論なども生まれた。一神教の説明によるとこの宇宙は善なる神が作ったそうだが、ではこの世に蔓延する戦争や飢饉、良い人にも悪いことが起きるのはなぜか?神がこの不完全な世界を作ったのなら、設計ミスじゃねえの?製造物責任法で返品するぞ?という「悪の問題」には答えられない。二元論の世界観は悪の問題には答えられるが、では「善と悪が戦う」という戦いのルールを作ったのはそれら「神と悪魔」を超越した更に高次の存在でもいなければ説明がつかない。神より偉い「超・神」がいたら、それを作ったのは「超々・神」なのか?など。そして大抵の人や宗教家はそれらの矛盾について「こまけえことはいいんだよ!」とか「神を試してはならない」などと言ってごまかしていたようだ。そんなので何千年も騙され続けた人類バカスwwww。

仏教かぶれの著者は仏教についても簡潔で的確な説明をする:

彼は自分の教えをたった一つの法則に要約した。苦しみは渇愛から生まれるので、苦しみから完全に解放される唯一の道は、渇愛から完全に解放されることで、渇愛から解放される唯一の道は、心を鍛えて現実をあるがままに経験することである、というのがその法則だ。
位置№2499

そして近現代には、人間至上主義の新しい宗教が登場したという。具体的には共産主義とナチズムであると。これをイデオロギーと呼ばずに宗教と呼ぶのがハラリの鋭いところだ。ナチズムは「人類種は進化も退化もするので意図的に進化を促してやらねば退化するだけだ。これはヒトラーが考えた事ではなく生物学の必然的な帰結である」と主張したので、ハラリのいう宗教の定義である「超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度」に合致する。
ちなみに共産主義は「労働者の蜂起によって階級闘争が終わるのは歴史的必然でありマルクスとレーニンの主張は反論の余地がない経済学の絶対的な真理」としたのでこれも宗教なのだそうで。

サピエンス全史下巻、位置№4431より引用。ナチ野郎への突っ込みとしては「お前が細マッチョ好きなだけじゃねえか」だろうか?お腹ポチャポチャのヒゲハゲオヤジが好きな人だって上野24会館付近のハッテン場には大勢いますよね?ねえハラリ先生?ハラリ先生は日本へ来る時はどこのハッテン場へ行くんですか?

無知の発見と近代科学の成立

生命保険の基礎知識について、その起源と理屈を知ってほしい。知れば、あなたも生命保険に加入するかもしれない。
生命保険が始まったのは18世紀のスコットランド。長老派教会の牧師たちは、亡くなった牧師の妻や子に年金を支給する基金を作りたかったが、その年金基金の毎年の拠出額を決めるには、毎年亡くなる牧師の数と、残された妻や子がその後生きる年数が無ければ計算できない。誰がいつ死ぬかなんて、それこそ「神のみぞ知る」なので、分かるわけないじゃないか。
しかしこの2人の牧師たちは「おお神よ牧師と妻や子の享年を教え給え」とは「神頼み」せずに、数学という道具を使った。

その道具とは、ベルヌーイの「大数の法則」だった。人一人に注目して、その寿命を知ろうとしても分かるはずもないが、多くのデータがあればその平均的な結果を高い精度で予測することは可能である原理だ。そこで2人は1238件の誕生と1174件の死亡の記録から、20歳の人が亡くなる確率は1/100だが、50歳の人が亡くなる確率は、1/39であることがわかった。
そこから計算された内容は以下の通り:スコットランドでは毎年27人の牧師が亡くなり、18人が妻を残し、5人が孤児を残す。そこで牧師は毎年2ポンド12シリング2ペンス払えば未亡人は毎年10ポンド受け取れる。
そして実際の資金は予想より1ポンド少ないだけという驚異的な結果となった。これは「おお神よ(略)教え給え」と祈ることより、どちらが望む結果を手に入れられただろうか?

つまり、この500年の人類の進歩とは「神は何でも知っている。聖典にその全てが書かれているので私達はこれ以上何も知る必要がない」との認識だったものが「私達は何も知らないから、知る努力をしなければならない」に態度が変わったことだと筆者は言う。

人類の態度が変わった結果、何が起きたか?社会が好転した。人類誕生から今まで、戦争と飢饉は避けられない宿命であるとすべての宗教は説いていたのが、そうではなくなった。戦争は減り、栄養状態は好転した。

貧困は人間の介入によって解決できる技術上の問題であると、しだいに見られるようになっているのだ。農学や経済学、医学、社会学の分野での最新の成果に基づく政策で、貧困を排除できるというのが、今や常識だ。
位置№4996

--

--

Hiroki Kaneko
Hiroki Kaneko

Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

No responses yet