「世界が滅亡する」という魅力的な妄想
西暦1000年頃、ヨーロッパのキリスト教徒は「異教徒のヴァイキングは恐れ多くも教会を襲撃するし、世の中のすべてのことが日に日に悪くなっている。最後の審判は近い」と思っていたようです。そりゃオメー、一神教（ユダヤ教、キリスト教、イスラム教）とかいう終末カルト宗教を信じてるからなんじゃネーノ？とか思うんですけど、当時の人は本気で信じていたらしい。あれから1000年、まだ最後の審判も何も無いですけど。
西部開拓時代のアメリカで、植民したアメリカ人はアメリカ原住民を見て「彼らは『空が落ちてくる』ことを恐れている」と、その恐れの原因が荒唐無稽である事を語っていた（どこで読んだんだっけ？ジャレド・ダイアモンドの本だと思ったけど）。
中米では、一度沈んだ太陽が二度と登ってこないのでは？と恐れ、恐れに対し自己犠牲（生贄）で対処していたらしい。ひどい。地球が太陽の周りを回っている事を知らないがゆえの悲劇。
日本では、1970年代後半に五島勉の「ノストラダムスの大予言」がベストセラーになり、世界の滅亡という妄想が広まったことがあったのだけど、ノストラダムスの占星術は当時、キリスト教の教会勢力に異端として裁かれるのを恐れて、本の中身を中世古代の複数の言語を混ぜて書かれていたそうなのだけど、五島勉は古代ギリシア語とか古フランス語やらを混ぜて書かれた本を解読できる程に語学に堪能だったのだろうか？
ちなみに五島勉の各種著作がその後のオウム真理教や幸福の科学といった新宗教に影響を与えたようだ。ウソに影響受けてるんじゃねえよマヌケ、などと思います。
そんな1999年、私にとっては、この間3作目が急に発売されて驚いたビデオゲーム「シェンムー」が発売された、ぐらいの印象しかないのですが、別に何事もなく、というか西暦でも元号でも何でもいいですけど、「時間は存在しない。今の瞬間と次の瞬間を区切る物理の法則は存在しない」と言っている科学者もいるくらいなのに、恣意的に時間を区切って、ここからここまでは何だ、と決めつけることに意味なんかあるのか？「ビロードの手と鷹の目」と呼ばれたフランスの写真家、ブレッソンがテレビ番組のインタビューで、21世紀についてどう思うか、と質問されて、やはり同じようなことを答えていたことを思い出した。
終末思想は、なぜこれほどまでに人類に受けが良いのだろうか？ダーウィン的に考えると、終末思想にビビった人間が子孫を残したから、と言えるだろうが、終末思想にビビった人間がなぜ子孫を残せたのか？と考えると、考えそのものが繁殖に有利であったからではなく、それが集団（終末カルト宗教）の旗印になり、その旗のもとに集まってコミュニティ内で支え合ったから子孫を残せたからなのかもしれない。
前世紀末、冷戦は終結していたけど、核戦争の可能性、みたいなのがリアルな危機だったし、「それが最後の審判なんだよ！」とMMRのキバヤシが煽っている絵が思い浮かびます。
核戦争の危機は遠のいたが、今度はその代用品として「人類の強欲が自然を弄んだ結果としての気候変動による人類滅亡」のような考えが出てきた。これに反論するのは中々難しい。というのも、気候変動は事実で証拠が沢山あるからだ。
学者が事実を元に発言をしている場合、「昔のオッサンが占いをした」よりも信じて良いと思う。しかし、いたずらに危機を煽るのは問題解決の手段として良くないのではないか。
というのは、もし「世界が滅亡する」という魅力的な妄想に反応することが人間の本能であった場合、その反応というのが「自分の正しさを周囲に伝えるための自己犠牲」という、人間の本能が出てしまうが故の、無駄な解決策で満足してしまう恐れがあるからだ。それで問題は解決しない。
なので、学者の皆様におかれましては、「臨界点を超える」などと恐ろしい事を言って大衆をビビらせても良いことは無く、そんなこと言ったら彼らは無意味な自己犠牲（「絶滅への反逆」疑似宗教の連中がやっている事）に走るだけですので、数学のテストで計算問題を解くように、粛々と事実と対策だけ述べれば良いと思います。
「本当のことを言って欲しい」→自己犠牲で問題は解決しない。これが真実。
今が1000年前だったら、「絶滅への反逆」は終末カルトとして、さぞ信者を集めただろう。そして今も信者が増えているのだから、人間の本質というのは何も変わっていない。変わったのは、人間の頼りにならない直感が本当であるか嘘であるかを判断するツールが増えたことだけだ。
