冷めるな。熱くなるな。バカになるな：Enlightenment Now 第21章:7
世界の大半はより理性的になっている．それはこれまでの章で見た通りの進歩を引き起こしてきた．しかし政治の世界だけが例外になっているのだ．政治の世界だけはルールが人々をお馬鹿に振る舞うように強制している．投票者はその意見を正当化する義務を負わず，その結果を引き受けることなく好きなことをいうことができる．貿易やエネルギーなどの実践的な政策はモラルイッシューとバンドルされてしまう．そしてバンドルされた政策の束は地理的，人種的，民族的同盟と結びつく．メディアは選挙を競馬のように報道し，イデオロジカルな問題を取り上げて激しい議論を煽動する．これらは全て人々を理性的な態度から遠ざけるように働く．この結果民主政の仕組みがガバナンスをよりアイデンティティドリブンで，非理性的なものにしてしまうのだ．
（太字は筆者）
「政治の世界だけはルールが人々をお馬鹿に振る舞うように強制している．」本当に、本当に、本当にそう思う。先の選挙のポスターで、誰だか知らん若い女性モデルの写真とともに書かれたコピーが「冷めるな」だった。「冷めるな」とはつまり、熱くなれ、バカになれ、野球やサッカーの試合のように観戦しろ、という意味では？そうじゃねえんだよ。「バカの部族主義者になるようにデザインされたシステムだが、バカになるな。事実ベースで議論しろ」の間違いでは？
問題が政治化していないなら人々は理性的に物事を判断できる．カハンは「科学についての大衆の激しい議論はむしろ例外だ」と指摘する．誰も抗生物質が効くかどうかや飲酒運転が良い考えかどうかについて真剣に議論などしない．
ところが私がYouTubeを見ていると「ワクチンは体に悪いから使うな」と言い張るアホの広告が沢山流れるんですよ。その他に表示される広告といえば、坊主の癖に政治などという俗な事に口を出す破戒僧、ハゲだけど坊主ではなく高圧的な物言いで自分の意見を通したいだけの詐欺師など、何この地獄？もし地上波TVがこんなCMばかりだったら発狂する。
こういうクソカス広告を見たくなかったらPremiumに入って金払えというYouTubeの圧力なのだろうか？しかもこういった広告にいちいち「不適切」「繰り返し表示される」を選んでも効果がなく何度も表示されるんですけど、なんで？私だけ？それとも皆そうなの？だったら「繰り返し表示される」って、どういう意味なの？
ちなみにワクチン不要論に対するピンカーの意見は「何億人もの人類を救った成果に対する忘恩」であり、この本でも触れられている。
議論をより理性的に進めるためには，問題をできるだけ非政治化するのが望ましい．多くの人は自分の支持政党の提案なのかどうかによって．その政策への態度を決める．だから提案者は慎重に選ばれるべきだ．一部の気候変動活動家は，民主党の大統領候補だったアル・ゴアが「不都合な真実」を出版したのは温暖化対策にとってはむしろ害があったのではないかと考えている．彼は温暖化に対して左派の政治化ラベルを貼ってしまったのだ，この問題についてはもはや科学者に何かをしゃべらせるより，左派と右派からそれぞれエビデンスベースでものを考えるコメンテイターを選んでもらい，両者に討論してもらった方が効果的だろう．
私は、オバマ氏が2期8年大統領を勤めた事は世界の幸福にとって（結果として）害があったと感じた。彼の政治的成果は8年かけてアメリカの医療改革法案を通しただけで、その反動がトランプだ。これはアメリカ国民にとって、反動に見合うだけの成果だったのだろうか？
1期4年で辞めて、次は誰か適当な共和党の保守政治家、レーガンの再来のような奴が大統領になったら保守派有権者にとって適当なガス抜きになり、トランプはニューヨークの金持ちのまま一生を終えたのではないか。歴史にifは禁物だけど。
「不都合な真実」が左派のラベリングをしたかどうかについては、私はそうは思わない。ここで言う左派が何を意味しているのか分からないけど、アラル海を消滅させた旧ソ連の強引な灌漑は左派ではないのか、とか。
ひとつだけ言えるのは「真実」とか「正しさ」などと自分から言い出すような奴の言うことは一切聞いてはいけない。これ、ネットリテラシーとして小学校で教えたほうがいい。真実も正しさもなく、あるのは事実だけであり、それを数えろと。
「ワクチンは体に悪い！教科書では教えない日本史の真実！」
「ということにしたいのですね;-)」
メディアは自分たちの役割をよく吟味すべきだ．政治をスポーツのように扱って競争させるより，個別の問題解決をエビデンスベースで考えるようにできないのだろうか．
「株価ニュースのように淡々と数字を挙げるだけのニュース」というアイディアがすごい。確かに定量化されているけど、誰が見るのか、という問題はある。誰かやらない？
