子供っぽさを捨てるということ。何かにハマるオタク的性質には進化的なルートがあるのではないか?
良いコードを書けるからといって偉いわけではない
もういい歳だし、コードなんて今後書くことも無いだろうと思っていたら、止むに止まれぬ事情により、気づけばまた書いている。
コーディングの試行錯誤は楽しいと感じてるものの、微に入り細に入り仕様を調べてやろう、という気にはならなくて困っている。昔の私にはあった「幼稚な情熱」が無くなってしまったからだ。なにか、すごいコードを書けば世界が変わる、などと言うつもりはないが、何かを成功させれば少なくとも自分は変わるのではないか、自身や他人からの評価が「あの凄い何かを作った誰某」と呼ばれるのではないか。デール・カーネギーの言う「偉くなりたいという欲求」、最近の言葉で言う自己承認欲求というか、そのような情熱がすべて子供っぽく、いい年をした人間がするものではない、と感じるようになってしまった。そして突如、赤いスポーツカーで旅に出るのが「中年の危機」というものでもあろう。
プログラミング言語Perlの設計者として有名なラリー・ウォールがインタビューでこんな発言をしたことがあった:
私は実際、家庭人としても4人のティーンエイジャーを育ててきました。うち2人は現在進行形でティーンエイジャーです。ティーンエイジャーにはおもしろい特徴があります。
彼らは、見かけよりずっと大人な側面がある一方で、ずっと子供っぽいところもあるのです。つまり、15歳の子供でありながら、ある側面は25歳並で、別の側面では5歳並みということもあります。我々はそれをそのまま受け止めてあげなければなりません。
https://japan.cnet.com/article/20100857/
これは自身の子育て体験とPerl言語の成長を重ね合わせた発言ではあるのだけど、「ティーンエイジャーの不安定さ」はティーンエイジャーだけのものなのだろうか?私は、人間というのは子供から老人まですべての世代が「ある側面は25歳並で、別の側面では5歳並み」の不安定な脳を持っているという考えが拭えないでいる。
ゆえに、アメリカのトップ大学院でCSの修士号を取得して、MSやAppleに就職したが1年ほどで突然辞め、突然来日してメルカリのクローンサービスなどを始めてしまう人を私は実際にこの目で見たが、このような人々も大企業に居たのでは叶うことのない「あの何々を作った誰々」と呼ばれたくて、新卒1年目で1500万円だか2000万円だかの仕事を棒に振ってしまうのだ。その後、その「メルカリのクローンサービスのようなもの」がどうなったのかは知らない。
ラリー・ウォールは頭の良い人間でもあろうけど、他のもっと凡人、コンピューター史に名を残さないであろう人間たち(自分含む)を見ると、そのような不安定さで溢れている。英語圏の人間でそのような傾向があるのか理解できるほど私は英語が堪能ではないので、日本語圏に限った話をすると、プログラミング言語がどうとネット上で息巻いている奴は大抵、非常に技術的な記事を書いたと思ったら次の記事は土曜日朝の女児向けアニメの感想を書いたりする。もしくはビデオゲームに夢中である。そして困ったことに、職業適性という点で言えば、彼らのような人間の方が、大人ぶった人間よりも優れたコードを書く場合が多い(印象です。証拠なし)。
彼らを突き動かしているのは妻と子供と35年の住宅ローンではないのは確かだ。「遊びが仕事に、仕事が遊びに」なっている彼らは私の理想の働き方を実践していると感じているが、尊敬はしない。かといって労働を尊いとするルター派だかの宗教も大嫌いだ。我慢したって報われないことだってある。
自分の興味のあることを突き詰めて大成するというのは幸せな働き方ではあるけど、自分の中の宝物だと思っていたものが急にゴミに見えた時にどうするのか?苦労して集めたトレーディングカードが急に紙切れに見えたら?
だから、アニメ大好きボクチャン達と同じく、大企業のお偉いさん達も、いい年して言うことが「利益の追求」なのだから、もうちょっとマシな事言えないのかよ?いい年して言うことはそれだけか?と感じる。
なにかにハマる、というのは自身の今後の人生を決定づける大変重要な事だとは思う。一体、光の性質にハマって特殊相対性理論に辿り着いたアインシュタインと、声優にハマって歴代プリキュア声優を全て声を聞いただけで判別できるアニオタとどこが違うというのか?
なにかにハマる、というのは非常に子供っぽいと感じる。この人間の性質は何か、恐らく一芸に秀でることで部族内で重宝され、子孫を残すことができた進化的なルートがあると感じる。キリスト教信者のラリー・ウォールはそうは思わないだろうけど。
そして古代においては人間の年齢は35歳くらいで死んでいたのだから「中年の危機」など存在しなかったのでは?
なので、今こうしてまたコードを書いていて、何かわからないことがあり検索してみると、一方では「人生の大切なことは全てアニメから学んだ」と書かれているブログを見ては、大した人生じゃねえなと思ったり、他方では「○○にjoinしましたナントカです!(中略)We’re hiring! Happy Hacking!」などとジョインだか女陰だか知らねえが型にはまりきった定型文をCTOとかいうイキった上司の命令で無理やり書かされているのだろうなと思われるスタートアップ企業のブログなどを、白けた目で見ております。