新しいアイディアは頭脳が集中する場所でないと…
徳島の山の中に新しく高等専門学校を作り、起業家精神を育成しようとする計画に関するニュース。
高専というものがない神奈川県出身の人間にはよくわかりませんが、高校＋短大と同じ5年制の学校なのだそうで。
15才からの若者を5年間、山の中に閉じ込めて何ができるのか想像力が貧困な私にはまったく想像できません。
開校前のサマースクールには全国から意識高い系の中学生が集まってきました。
意識高い、未来ある若者のお方。この無学な中年に教えてほしいのですが、”AI”って何？
最新技術？
AIとは特定の学問領域を指す言葉であって、それは1950年代からあるんですけど。ジョン・マッカーシーとかってご存知？
そのAIなる学問領域の、現実世界での最も成功した例って、単なる掃除機（ルンバ）しかないのですが？
しかもルンバで使っているAIって、経路探索アルゴリズムとかそういう、50年前から存在する、いわゆる古典AIと呼ばれているもので、それはあなたが高専の5年間で割と楽に実装できるのではないか？A*/エースター経路探索アルゴリズムがAIかどうか知らないけど。
この10年で大層話題になった深層学習の成功例って何かありました？
Siriなどの音声認識、車載カメラの画像認識の速度・精度が向上した？
そりゃすごい、大成功だ。でもそれは「ハードウェアの処理速度向上→速度向上」とか「サンプルとして学習させる音声・画像データがインターネットにいくらでも存在して、学習モデルを育てやすくなった→精度向上」という部分に負うところも大きく、AI（＝アルゴリズム）だけの手柄ではない。日本の交通事故死亡者が減っていったのは車載カメラの自動ブレーキシステムの普及だけではなく、道路に信号をつけるだとか、道幅を広げるだとか、交通ルールの啓蒙、世代が進むに連れ運転マナーの向上など複合的な要因の結果にすぎないと思う。
それで、このAIというものにこの子は何を期待しているのか？この学校では、ちゃんと「AIというのは魔法の道具ではない」と教えるのだろうか？それとも「Googleが提供する画像認識APIを使えるようになることがAIである」と嘘をおしえるのだろうか？
イノベーションは人口の多い都会からしか生まれない
起業家精神を育成することで、卒業生の中から何人かは、この徳島の山の中に住み着いて、そこで僻地に住む老人のための移動スーパーマーケットをするかもしれない。そりゃすごい、成功だ。
しかし残念なことに問題の根本原因を正しく認識しなければ問題が解決しないのと同じく、若い人に起業家精神を植え付けただけでは「日本のシリコンバレー」にはならないと感じる。
イノベーションとは多数の異なるアイディアが集まるところにしか生まれないのでは？アメリカがアメリカたる所以は、世界中から異なるアイディアを持った優秀な人達が集まってくるからイノベーションが起こるのであって、それを日本人だけでどうにかしよいうというのがそもそも間違っている。
そして日本の政治の方針では、外国人労働者は使い捨てにするのだそうだ。ただでさえ円安で「日本では稼げない」状態なのに、こんなに働きづらくて優秀な外国人が来るわけがない。なにしろ、アパートだって大家が「ピアノと犬と外国人お断り」と言っているからだ。住むところすらないじゃないか。というかこれ、めちゃくちゃな差別なのですが。
それでも政治の中枢にいる老人たちは未だに「外国人は日本で働きたがっている」と妄想しているのだろうな。誰が稼げないところへいくか。
では、山奥の学校は何のためになるのか？というと、アメリカにおける地方都市の大学と同じようになるんじゃないかと思う。アメリカの地方都市に大学があれば、世界中から学生が集ってきて、まず地元経済が潤う。そして卒業生の何人かはその大学街に居着き、そこで勤めたり、新たなビジネスをはじめる。そして元からいた住民たちの認識が、少しずつ開放的、国際的になっていく…という具合だ。大学があることで街に良い影響が出ている。
しかしこの高専の生徒は日本人ばかりなので、国際的に、というのは望めない。効果は限定的だ。
これが山間部の移動スーパーマーケットだ。
「アプリの採用を検討するなど」ということは、在庫管理を移動スーパーがやるのですね？どうやって？バックエンドは今は何で動かしている？とか、顧客に持たせる「アプリ」とやらも「団塊の世代の老後はスマホを使える」という前提のもとに考えているようだけど、私の親はスマホ使えませんが…。
