正解はない

Hiroki Kaneko
Dec 15, 2024

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Photo by Viktor SOLOMONIK on Unsplash

私は最近、Mediumの記事ばかり見ていた。ここに日本語で記事を書く人はせいぜい数十人といったところで、ほとんどの記事は英語で書かれている。英語が得意ではない私でも、Google翻訳プラグインを利用すればだいたい記事を読めるので、せっかく有料サブスクリプションに加入しているのだからと積極的に記事を読んでいる。

そこで目立つのが「クソッタレなアメリカを出て南ヨーロッパへ移住しよう」と書いて小銭を稼ごうとするアメリカ人だ。その理由というのは物価高なのか、政治的理由なのか、おそらく両方だと思うが、世界最強の通貨であるアメリカドルを稼げるという権利を放棄してまで、どこへ行こうというのか?そして彼らアメリカ人が熱い視線を送っているのは大抵が大西洋の向こう岸、つまりスペインやポルトガルであり、間違っても太平洋の向こう側である日本ではない。

このようなクリックベイト的な記事を見ると既視感を覚える。
パンデミックの前くらいに、SNSの日本語コミュニティでは「IT知識自体を情報商材として売る」という小さなブームがあった。それを後押ししたのが電子書籍を売るプラットフォームの勃興だった。彼らは内容の薄い、WordPressだかPHPだかの入門書と称する文章を10万円以上の高値で売っていて、要するに「ソフトウェア・エンジニアになれなくてもWordPressサイトのメンテナンス案件で稼げる!世界中どこでも旅しながら仕事ができるデジタル・ノマドになろう」というわけだ。彼ら自体、ソフトウェア・エンジニアではないので専門的なことは書けない。だからこそ「何もわからない私でもフリーランスのノマド・エンジニアになれた!」という物語を売ることができる。その物語の本が10万円なことについては、これが安いのか高いのかは各自が判断してください。私は死んでも買わない。
私は日本語話者であり日本国パスポートホルダーだが、日本で仕事を見つけることに苦労している。一体どうやって外国で仕事を見つけようとするのか?言葉の壁は?ビザは?いや、そんなことよりWPメンテナンスなんて「一番単価の安い仕事」なのに、それでどうやって生活するつもりだ?

ここまで書いてようやく本題に入る。私のような疑問に対して、ある日本人コミュニティが天才的な答えを出した;東欧ジョージアに移住しよう。

ジョージアはビザの問題もなく物価が安いため、そのような低スキルで低単価の仕事でも生活ができるとのことだ。私はこう思った;そんな政治的に不安定な国で暮らしてどうするんだ?2008年の南オセチア紛争により国土の一部をロシアが実効支配していいて、国内にも様々な民族問題がある国で、そのような歴史的経緯も知らない奴らが「物価が安いから」で暮らす?冗談じゃない。ロシアという「マフィアが経営するガソリンスタンド」の隣で暮らすことの脅威を一体どれほどの日本人が感じているだろうか?日本にも北方領土問題というロシアとの領土問題は存在するが、ロシアと日本は海で隔てられている。これが地続きであることの脅威はこんなものではない。私は今年の秋に日本在住のウクライナ人女性と知り合い、ロシアの隣で暮らすということがどのようなことかを経験談として聞いた。彼らの反ロシア感情というものは相当なもので(戦争状態だから当然だが)、「ロシア語とウクライナ語って似てるんですか?」と何気なく質問しようなら「ぜんぜん違う!」と否定される。

そして今、ジョージアの政権はロシアで財を成した(当然ロシアの傀儡)人物が党首の政党が握っており、その混乱に乗じてロシアが侵攻してくる可能性だってある。なぜならロシアによるクリミア半島の不法占拠は、ウクライナのマイダン革命のすぐ後だったからだ。

低スキルなあなたでも楽に暮らせる、みたいな話はすべて嘘なので、飛びつかないでください。こんな連中は今頃「物価が安いウクライナで暮らそう」とか言いかねないから。

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Hiroki Kaneko
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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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