「男はつらいよ」ばかり見ていたので大船までサイクリングした

Hiroki Kaneko
6 min readFeb 12, 2020

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旧・松竹大船撮影所(現・鎌倉女子大学)

Amazon Prime Videoのチャンネル「プラス松竹」に入ると、月330円で松竹映画が見放題になる。とはいえラインナップの40%くらいが「男はつらいよ」なので、このシリーズが好きかどうかで330円が高いか安いかが決まるのだけど、元々は「テレビ回想法」が母の認知症予防になるかと思い、母親に見せようと思ってAmazon Fire TV Stickを買ったのだけど、思いの外、当人が「男はつらいよ」にドハマリしたので、良かった。1日に3本「男はつらいよ」を見ていたせいで、母の頭の中は40~50年前に戻ったようになっていたし、映画で面白いところは普段見たことがないくらい笑っていた。

異星人からのレビュー

シリーズ後半になると寅さんはすっかり良い人になるんだけど、第一作目では単なるヤクザなので面白い。そして不思議なことにAmazonレビューに「関西育ちの私はどうも江戸っ子の話は苦手で」と書いている人がいる。なんで?全く意味がわからん。それなら私は「関東育ちの私はじゃりン子チエはどうも苦手で」と言わなければならないのか?別に見ますけど。福岡生まれなら「漫画はクッキングパパとまんだら屋の良太しか受け付けない」とでも言うのか?日本生まれだとハリウッド映画は苦手なのか?そんな事が有りえるのか?異星人のレビューだ。閑話休題。

松竹大船撮影所改め鎌倉シネマワールドの思い出

1990年代後半の短い期間だけ、大船に小さなテーマパークがあった。それが「鎌倉シネマワールド」というやつで、松竹大船撮影所の跡地に作られた、まあショボめのディズニーランドのようなものだった。JR大船駅を降りて、戦後の闇市のようなごちゃごちゃした商店街を通り過ぎ、住宅街をしばらく歩くとイトーヨーカドーとデパートの複合施設があり、その向こうに、その「日本のハリウッド」があった。現在は鎌倉女子大学があるようだ。

中の通りは「東京ディズニーランドのワールドバザールを小さくしたような感じ」であり、何か乗り物に乗る、お化け屋敷もあったような気がするけど詳しくは覚えていない。当時、既に閉館が決まっており入場券をタダで配っていたので、暇なニートである自分は姉と行ってみたという次第だった。

そして松竹なので当然「男はつらいよ」で主な舞台となる「くるまや(旧とらや)」や、タコ社長の印刷会社「朝日印刷(旧共栄印刷)」のセットなどがあり、当時「男はつらいよ」に興味のなかった自分は「ふーん」という感じで通り過ぎてしまったのだけど、今ならもうちょっとVR体験型のアトラクションにして、客は寅さんの格好をしてゴーグルをかぶり、「大したもんだよカエルのションベン見上げたもんだよ屋根屋のふんどし」と地口を言いながらタコ社長と取っ組み合いの喧嘩ができるといいんじゃないか。よくないんじゃないか。

そして当時、周辺のラーメン屋には「渥美清もよく通っていた」と書かれた看板が飾ってあったりと(今あるかどうかは知らない)、どうも私の中で「男はつらいよ」は葛飾柴又ではなく、大船の話しなんじゃないか、という気がしてならない。JR鎌倉駅周辺の屋敷の大きさやガレージに停まっている高級車とは対象的に、大船の仲通り商店街は戦後の闇市のようでもあるし、東京の下町のような庶民性を感じる。「男はつらいよ」の聖地は柴又ではなく大船だ!と地元人間は感じているが、当時を偲ばせる建物は存在せず、「松竹前」交差点があるのみで…。

増長しまくった松竹のお馬鹿さん社員

松竹前交差点

1990年代中頃、インターネットの商用利用が可能になり企業もWebサイトを持たなければ、という機運が出始めた頃、地元のSIerが地元企業に対して「御社もWebサイトを作りませんか?」と営業をかけたそうな。そのときに対応した松竹の社員が「うちはアンタの所みたいなわけのわからない会社とは取り引きしないよ」と取り付く島もなく追い返され、当時はまだ小さかったファンケル(大船が創業地)は話を聞いてくれたそうだ。
一応その「わけのわからない会社」の名誉のために言っておくと、そこは一部上場企業なのでそれが「わけのわからない会社」なのかどうかは読者の判断に任せる。これ、当事者から聞いた話です。
その後の松竹は、渥美清が亡くなったことで収入源であった「男はつらいよ」シリーズが続けられなくなり、更に鎌倉シネマワールドも大赤字で閉園し、今は都心の自社ビルなどを貸して家賃収入で食いつなぐ不動産業が収入源なのだけど、「金持ちだったという祖父の遺産で食いつなぐバカ息子」がそんなに偉いのか?松竹は当時からインターネットの重要性も理解していない様子でしたので、月330円という今どきは喫茶店でコーヒーも飲めない値段で苦労して作った映画が見放題になり、そこからAmazonに半分くらいショバ代を取られてるのでは、そんなものが儲かるとも思えない。当時、取り付く島もなく追い返された社員の言葉を借りれば「ざまあみろ」と言うべきだろう。

この増長しまくった社員を、寅さんなら「ネットで売(バイ)もできない青二才が」とでも言うのだろうか?もしくは「こうなりゃヤケだ!松竹映画が全部で330円持ってけドロボウ!」と縁日で叩き売りされてしまったのか。

現地にも行ってきたし、当事者の話も自分の体験談も書けたので、よく知らないやつが書く「いかがでしたか記事」よりは楽しめるのではないか。

“いかがでしたか?松竹が時代を見誤って没落したことがよく分かりましたね?”

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Hiroki Kaneko
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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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