私がホモ・デウスでハイライトした所(3)
第9章 知能と意識の大いなる分離
1 人間は経済的有用性と軍事的有用性を失い、そのため、経済と政治の制度は人間にあまり価値を付与しなくなる。
2 経済と政治の精度は、集合的に見た場合の人間には依然として価値を見出すが、無頼の個人としての人間には価値を認めなくなる。
3 経済と政治の精度は、一部の人間にはそれぞれ無頼の個人として価値を見出すが、彼らは人口の大半ではなくアップグレードされた超人という新たなエリート層を構成することになる。
№6194
著者は奇妙なことを言っております。まず1番ですけど、「人間は経済的有用性を失う」というところ。
そう?そうなの?大衆がAmazonで買い物が出来なくなっても依然としてジェフ・ベゾスは世界一の金持ちでありつづける事ができ、自分を改造してサイボーグになるとでも?何言ってるんだ。大衆は金持ちの栄養源であり、大衆なくして金持ちは存続し得ない。
そういう次第で、エリートがエリートであり続ける為に、大衆から金を薄く広く吸い上げる必要はあるんじゃないの?
実際問題としては、民主主義や自由市場などの自由主義の制度がそのような打撃を生き延びられるとは思いにくい。なにしろ、自由主義が支配的なイデオロギーになったのは、たんにその哲学的な主張が最も妥当だったからではない。むしろ、人間全員に価値を認めることが、政治的にも経済的にも軍事的にもじつに理に適っていたからこそ、自由主義は成功したのだ。近代以降の産業化戦争の大規模な戦場や現代の産業経済の大量生産ラインでは、一人ひとりの人間が大切だった。ライフル銃を持ったり、レバーを引いたりする、一つひとつの手に価値があった。
№6199
ルンバが自動的に掃除をしてくれるから、人間から掃除の仕事はなくなると?ルンバはテーブルを台拭きで拭いてくれないし、選択したものを畳んでチェストに入れてくれないのに?洋服折りたたみロボットが各家庭に置かれる未来は見えてこないのだけど。クリーニング工場では良さそうだけど、スケールメリットを出せない各家庭にこのロボットを購入して維持するコストは見合わない。
そういう次第で家庭のこまごまとした作業は残り続けると思うけど。
一九世紀に産業革命で巨大な都市プロレタリアートが誕生した。そして、社会主義が広まったのは、この新しい労働者階級の、前例のない欲求と希望と恐れに、他のどんな教義も応えられなかったからだ。最終的に自由主義が社会主義を打ち負かせたのは、社会主義の綱領から最良の部分を採用したからにすぎない。二一世紀には、私たちは新しい巨大な非労働者階級の誕生を目の当たりにするかもしれない。経済的価値や政治的価値、さらには芸術的価値さえ持たない人々、社会の繁栄と力と華々しさに何の貢献もしない人々だ。この「無用者階級」は失業しているだけではない。雇用不能なのだ。
№6595
新用語「無用者階級」。怖いね。しかし「雇用不能」だから何だというのだ?学会、産業界が求める人材?へえ、すごいね。だから何だというのだ。そのような業界から「用がある」と言われなければ生きていられないというのなら、その道の先にはアウシュビッツやダッハウやテレジアンシュタットといった場所があるのだけど。「用がある」側の人間からの、こういった言説は大嫌い。
第11章 データ教
資本主義が共産主義を打ち負かしたのは、資本主義のほうが倫理的だったからでも、個人の自由が神聖だからでも、神が無信仰の共産主義者に腹を立てたからでもない。そうではなくて、資本主義が冷戦に勝ったのは、少なくともテクノロジーが加速度的に変化する時代には、分散型データ処理が集中型データ処理よりもうまくいくからだ。
№7537
証拠なしの当て推量。一応仮にも大学教授がこんな事を書いてよいのか。あとアンタ、コンピューターについて何も知らないでしょ?元プログラマーであるピンカーの言説の方が2兆倍マシ。
これは、二一世紀に再びデータ処理の条件が変化するにつれ、民主主義が衰退し、消滅さえするかもしれないことを意味している。データの量と速度が増すとともに、選挙や政党や議会のような従来の制度は廃れるかもしれない。それらが非理論的だからではなく、データを効率的に処理できないからだ。このような精度は政治がテクノロジーよりも速く進む時代に発展した。(略)ところが、政治の動きが蒸気機関の時代からあまり変わっていないのに対して、テクノロジーはギアをファーストからトップに切り替えた。今やテクノロジーの革命は政治のプロセスよりも速く進むので、議員も有権者もそれを制御できなくなっている。
№7574
現在の政治と呼ばれる意思決定システムがうまく動いていないのは、データの処理がどうこういう問題ではないでしょう。現在の政治が「自民族中心主義の馬鹿になるように強制される」システムだからでしょう?そこにコンピューターも何も関係ない。仕組みが悪いのだ。
著者は何か、コンピューターというものが勝手にデータを処理し始めると思っているような印象を文章から受けますけど、データ処理をするアルゴリズムを書くのは人間であり、コンピューターとは全く関係がない。紙のノートの上に鉛筆でコードを書いたっていい(それでは動かないけど)。新たな発想というのはコンピューターという名の電子計算機は作ることが出来ず、人間がその知能でのみ挑み続けるしかない、というのは宇宙の起源を探る理論物理学者がやっていることなのですが。
証拠を元に話し合わなければならない。それが現在よりマシなシステムであり政治になる、と言ったのはピンカー。「人間は自らを改造して神になる!」と半世紀前のSFのような妄想を垂れ流すのが著者。
この辺りからだんだん、著者の言わんとすることに私は冷めてゆく。
イギリスがEUを離れても、トランプがホワイトハウスを引き継いでも、権力は一般の有権者のもとには絶対に戻らない。 だからといって私たちは、二〇世紀のもののような独裁制に立ち返るわけではない。独裁的な政権もやはり、テクノロジーの発展のペースや、データの流れの速度と量に圧倒されているようだ。二〇世紀には、独裁者は将来への壮大なビジョンを持っていた。共産主義者もファシストもともに、古い世界を完全に破壊してそこに新しい世界を建設しようとした。あなたがレーニンやヒトラーや毛沢東についてどう考えていようと、彼らにはビジョンがないと非難することは出来ない。今日、指導者にはより壮大なビジョンを追い求める機会があるようだ。共産主義者とナチスは蒸気機関とタイプライターの助けを借りて新しい社会と新しい人間を作ろうとしたが、今日の預言者はバイオテクノロジーとスーパーコンピューターを頼りにできる。
SF映画では、ヒトラーのような冷酷な政治家がそういった新しいテクノロジーにたちまち飛びつき、あれやこれやの誇大妄想的な政治の理想の実現に利用する。ところが二一世紀初頭、現実の世界の政治家は、ロシアやイランや北朝鮮のような独裁国家においてさえ、ハリウッド映画に登場するような人物とはまったく違う。彼らはどんな「素晴らしき新世界」の構想も練っていないようだ。金正恩やアリー・ハメネイも、原爆や弾道ミサイル以上のものには逆立ちしても思いが及ばない。まさに一九四五年止まりなのだ。プーチンの野心はもっぱら旧ソヴィエトブロック、あるいはさらに昔のロシア帝国を再構築することに限られているらしい。
№7604
ですよねー。夢のかけらを追い求めて廃墟の遊園地をさまよっている、といった感じですか。
ところがトランプもプーチンも習も安倍も、テクノロジーなんか何も知らないダセー奴らなので過去の成功体験の劣化コピーしか出来ない。このアホ首脳連より少しはマシな脳ミソだと思っていたオバマですら「アメリカ国民誰もがプログラミングを学ぼう」なんてダセー事を言い出すので、もう何もわからないなら黙ってろよお前ら。
そしてハラリも、コードが、アルゴリズムが何であるのか、それを人間はどのように生み出すのかについて理解していないように感じた。
ハラリ氏、あなたが政治家になれば、既存の「小さなスケール」の政治家より余程マシでしょう。今こそイスラエルの政界に打って出よう!「ユダヤ民族などという集団は虚構に過ぎない!」はい落選。
冷酷な億万長者や小さな利益団体が今日の混沌とした世界で成功しているのは、彼らには他の人よりも状況がよく読めるからではなく、彼らの狙いがごく限られているからだ。混沌としたシステムでは視野が狭いほうが有利に働くし、億万長者の権力は彼らの目標と厳密に釣り合っている。世界でも有数の富裕な実業家がさらに一〇億ドル儲けたいと思ったときには、そのために現在のシステムを容易に出し抜ける。それに対して、世界の不平等を是正したい、あるいは地球温暖化を止めたいと思ったら、彼らでさえできないだろう。現在のシステムがあまりにも複雑だからだ。
№7641
「どこか秘密の部屋で葉巻を吸いながらスコッチをくゆらせるガウン姿の大金持ちが世界を牛耳っているわけではない」
ロボットの反乱が怪しいとわかり始めると新たなデジタル黙示録が浮かび上がった.今度のはフランケンシュタインというよりミダス王の話に似ている.それはValue Alignment Problem(価値決定問題)と呼ばれる.我々は自らの目的設定をAIにまかせてしまい,その後はAIに目的設定を乗っ取られ,あとは受動的に生きるしかなくなるという恐怖だ.
これは簡単に反駁できる.このシナリオは以下の馬鹿げた前提に基づいているからだ.(1)ヒトは全知全能のAIを設計できるが,その全知全能AIはテストなしで本番移行するほど愚かだ.(2)そのAIはヒトの脳を書き換えるほど聡明だが,目的設定を間違えるほど愚かだ.互いに相克するゴールがある中での行動選択は,知性を設計するときに入れ忘れられるようなアドオンではなく,知性そのものなのだ.
要するにAIもその他のテクノロジーと変わらない.それは累積的に発達し,多くの条件の中で機能するようにデザインされ,テストの上でリリースされ,常に安全をチェックされるのだ.
AIについていえば,それによって職を奪われる人がいるという問題は確かにある.しかしこの失業は一瞬で生じるわけではない.引き続きヒトはコストの割には非常に高性能であり続けている.皿洗いや使い走りやおむつ換えは自動運転に比べて遙かに難しいのだ.
抄訳の引用ですが、ピンカーの「Enlightenment Now」を日本語にしてくださった方がいて、とても感謝しています。
元プログラマーのピンカーらしく「テストなしで本番移行」などの私にとって耳慣れた言葉で説明されると安心します。