“脱中央集権化Web”は可能か?

Hiroki Kaneko
9 min readJun 15, 2019

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スキャンし直した

デジカメで撮影した画像が汚かったので、スキャナーで撮影し直しました。
あまりテクノロジーには詳しいとは言えないビッグイシュー日本版編集部と、知ったかぶりだけは超一流のクリックベイトであるイケダハヤトが脱中央集権化(decentralized)Webに関する「議論」したと。その詳細はこの文章からは伝わってきませんが、元ルネサスと言いながら技術のことは何も知らない広報担当のイケハヤ先生がお得意のビッグマウスをビッグイシューに吹かせたのだろうな、という事は分かった。

そんな事はどうでもいい。いや、どうでも良くない。私の中でビッグイシュー日本編集部に対する信頼が下がった。しかしまあ、カネの事以外は何の興味も示さないイケハヤ先生が、こんなカネと程遠い場所に長い首を突っ込むなんて、イケハヤって実はいい奴なんじゃないか?と錯覚すら覚える。

“脱中央集権化Web”は可能か?

北朝鮮や中国は言うに及ばず、名ばかり民主主義国のロシア、トルコ、そして自由民主主義と言われてもその意味を理解できず、自民党のオッサンどもの顔ぐらいしか思いうかばないアホ有権者ばかりの日本でも海賊版サイトのIP規制をプロバイダレベルでやろうぜ、などという話も聞こえてきて、インターネットの商用利用が可能になって四半世紀の今、その将来が危ぶまれるような状況でもあります。しかし軍事政権、独裁政権下の国にとって表現の自由というか、情報を取得する自由なんてものは元々無かったわけで、そこに、国家も企業の後ろ盾もないインターネット(Web)というものが、中央も持たず、”ネットワーク間ネットワーク(inter-net)”として瞬時に世界を繋いでしまった。
Webは何の前触れもなく登場して、法規制も間に合わないまま瞬時に世界を変えてしまったのだから、これは長い目で見れば市民の権利の大進歩であって、2019年現在の現状だけ見て、規制だらけだ、と言われても、それでも良い面に目をやれば驚異的と言うほかない。

鉄道とタイプライターや印刷機が共産主義思想を広めると信じていたマルクスだかレーニンだかも想像が及ばなかったであろうこれは21世紀世界の顛末であり、今後登場するであろう新たな価値観が広まる際は、タイプライターだかで打って印刷所で複製した紙の束を蒸気機関車に乗せて配布せずとも、必ずやインターネットを通じて世界中に瞬時に広まるのだから、「歴史的必然」として階級闘争の末に労働者の世界が訪れ、それが究極の姿でありそこでおしまい、その先は社会改革は無い、と考えている連中にとってまことに危険な道具である事は確かだ。ちなみに私が出会った1000人ちかい中国人のうち、こんな事を真に受けている奴なんか一人も居なかった。中国の大学ではマルクス主義(マルクス経済学ではない)が必修科目なのに、教育の大失敗だ。ちなみに私立大学は知らない。

何の話だ。そうそう、インターネットは中央も無ければ、国家や企業の後ろ盾もない、まさに権力を打ち壊すためにあるような恐ろしくアナーキーな存在であるのが、なぜ今頃になって規制だの中央集権化だの言われているのだろうか?今現在の問題は、こんな感じだろうか:

  1. ISPのProxy規制(中国の金盾など)
  2. アメリカの巨大ICT企業による支配

他に何かあります?こんなものでしょう。まず2番ですが、これは回避可能でしょう。巨大ICT企業に支配されていると感じているのは、それら企業が提供するサービスが快適であり、消費者の選択により回避は可能だ。

・Facebookが無ければ海外の友達の消息が知れず、寂しい?仕方ないね、そんなものだろう。たまに写真付きメールでも送ってあげなよ。
・Amazonが無ければ安く買い物できない?調べると分かるけど、常にAmazonが一番安いわけではない。
Appleが無ければ滑らかなスクロールによる快適なWebブラウズが楽しめない?本当にそうだけど、脱GAFAのためにはそのくらい我慢してもらおうか。Javaのガクガクスクロールを喰らえ(ちなみにスクロールの先まで達した後に少し引っ張って戻ってくる、あの動きはAppleの特許なので真似できません)。
・Googleが無ければ検索できない?DuckDuckGoの日本語検索も、以前言われていたほどひどいものではないと感じるけど、どうだろうか。

一番難しいのは「いかに他人を巻き込んだ行動を起こすか」であり、国家はそれに一番の注意を払っている:

テンセントが開発したこのアプリは素晴らしい機能を持ち、使いやすく、便利で、面白い。

同意しかねる。チャットアプリとしての出来は、LINEと同じ、下の下だと感じた。UXに関するところは、Apple iMessageやGoogleの現れては消えてゆく各種メッセージアプリの足元にも及ばない(ウィンドウという概念の無いスマホアプリで「閉じる」ボタンをLINEで見た時は卒倒しそうになった。私は使っていない)。
ではなぜアホな日本人やアホな中国人がLINEやWeChatといったクソアプリに縛られているのかというと、他の人もそれを使っているから、止められないのだ。私のように止められる人間は相当な変人というところだろう。

国家や巨大ICT企業が市民を縛り付けているのではない。市民同士がお互いを縛り付けている状況を、企業や国家は利用しているのだ。「LINEやWeChatは出来損ないのクソアプリだ!学校の卒業証書には何の意味も無い!紙幣はただの紙切れだ!」と叫びたい所だが、最後の一つを叫ぶと本当に生活が立ち行かなくなる。

では1番は?これが一番むずかしい。そこには全てのISPが何の法規制も受けない独立した存在である、という前提が無ければ何らかの規制を受けるのは当然だからだ。

脱中央集権化の技術とは何か

ビッグイシューの件の「議論」では、何が脱中央集権化を助けるのか、といった具体的な話が一切出てこないあたりがイケハヤと編集部の限界のような感じですけど、例えばそれはIPFSのようなものを指しているのだろうか。

それかWebTorrentのような?

今の所、このようなものをどうやって配布するのか、という問題がある。IPFSはアプリだし、WebTorrentだって、それをWebブラウザに読み込ませるためのサイトが必要であり、それはどこかにホスティングされなければならない。

アプリの配布先としては、以下のようなところが思い浮かぶ:

・OSベンダーが運営するアプリストア(Apple App Store, Google Playなど)
・野良アプリストアのような独立した配布元
・スニーカーネット(OFF会で手渡し)

どちらも簡単に規制できる。OSベンダーへは政府が圧力をかける。野良アプリストアに対しては、ISPに圧力をかける。P2Pのような仕組みなら?それですら、アプリの最初の配布元が必要になってくる。

HTTPではなく下位プロトコルの上に何か独自のスタックを乗せるとしても、そこに規制が入ったらおしまいじゃないか。HTTPの代用品を作った所で、それはIPの上に構築されているにすぎない場合は、IPアドレス単位で規制をかけられたらおしまいだ。

OFF会での交換会も、大正時代の日本みたいに、検挙、監禁、拷問、みたいになるからやらないほうが良い。

要はこいつらの言う「脱中央集権化」なるものは、単なるサーバーレス技術でしか無く、そんな御大層なものではないと感じた。
サーバーレス、と言ってもその実「サーバーサイドロジックレス」というだけで、アプリ配布にしても、必ず最初の入口が必要になり、そこを塞がれたらおしまいなんじゃないか?

どうやったら真の「脱中央集権化」が出来るか、私、こんな議論をしたいと思っているのですが、どこでやってますか?やっぱりHacker Newsで英語でやらなきゃ駄目ですか?

もしやるなら

衛星インターネット。でもこれも巨大企業が作るものだし、基地局経由でそこがISPになるなら意味がない。

何らかの技術で脱中央集権化が実現したとしても

肝心の市民は偽ニュースに振り回されるので意味なし。多くの市民は本当のニュースだって「信じない」のだから、問題の本質は情報の自由だとかそういうものではないと思う。神の存在、国家の存在、企業の存在、紙幣の存在、全部偽ニュースじゃないか。それらをすべて捨てて、「事実ベースでお話をしましょう」と全人類が言うようになるとでも言うのか?そんなもの、遺伝子操作でもして「虚構を受け入れない新人類」でも作らなければ無理なのでは?

そういった次第で

脱中央集権化すれば問題が解決すると考えるのは間違い。サーバーレス化でホスティング業者の利益が低下するくらいの影響。しかし土管屋(回線施設業者)には何の影響もない。
問題の本質はそんなところではないのに、何かバラ色の未来を見ているようですので、ビッグイシューの、この「議論」に全く意味はないと考えます。意味はわからないが、とりあえずGAFAなどの大企業に楯突こうというビッグイシューのお歴々、では2013年頃にFirefox OSがインストールされたスマートフォンが販売された時、iPhoneやAndroidを殴り棄てて当然買ったんですよね?そういう意味のない「左派のポーズ」みたいなのは止めて、もっと本質を見ろよ。

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Hiroki Kaneko
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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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