読書ノート/アメリカ輸出向け坊主:今、ここを生きる/ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェ著

Hiroki Kaneko
6 min readApr 26, 2020

--

https://www.amazon.co.jp/petit-Editer-%E3%81%8A%E5%9C%9F%E7%94%A3JAPAN%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88-%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E9%87%91%E9%96%A3%E5%AF%BA-%E3%80%8A%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E8%A6%B3%E5%85%89%E5%AE%A2%E5%90%91%E3%81%91%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%9C%9F%E7%94%A3%E3%80%8B/dp/B07S9HN4W2

外国人観光客向け日本土産

BABYMETALの動画をYouTubeで見た。何か、浅草寺の仲見世で売られている外国人観光客向けの土産物のような、地元民は買わないであろう土産物のようなアイドルだと思った。これを欧米人は「日本的だ」などと思っているのだろうか?日本人でも勘違いしている奴がいそうだが、もし私が写真コンテストの審査員であり、「日本の風景」がテーマで写真を募集したとして、応募者が逆さ富士だとか、金閣寺だとかを撮ってきた奴がいたら全員落選だ。そのような想像力が貧困な奴らが撮る写真などかけらも面白くないからだ。外国人写真家が日本を訪れた。そして日本人写真家と銀座を歩いていた。外国人カメラマンは和服姿の女性にカメラを向けてシャッターを切っていた。対する日本人の写真家は彼女を撮影しない。それは単に、銀座の高級クラブのママが出勤している姿だったからだ。

桜がキレイ?あっそう、皆が話題にするものにしか目が行かないのですね。私は木蓮の花の方が好きです。

ようやく本題。ただいまAmazon Kindleで無料で読めるこの本、今まで私が読んでいた坊主はスリランカ人の長老派仏教だったが、今度はチベット仏教だ。著者、ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェ(二世)は、有名なチベット仏教の転生システムにより、幼少期に初代ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェの生まれ変わりであると「認定」され、本人の意志とは関係なく子供の頃から僧院で修行させられるはめになった。しかし僧院での精神修養、自己を見つめる瞑想のおかげで、自分を相対的に見つめられるようになり、著者が子供の頃から患っていたパニック障害が治ったエピソードは感動的だ。本書で一番の読みどころかもしれないし、読者も勇気づけられるだろう。

成人してからは、著者の言う「袈裟を着ていると何か偉い僧侶であると勘違いされるのか、世界中の研究者たちからコメントを求められ」て脳科学者と一緒に研究をすることになったとのこと。

そこで著者の脳科学者との付き合いから、何か科学っぽい事を言えるし書けることが、著者が欧米で人気になった理由でもあろう。私はもちろん脳科学者でもないし、単なる中卒のアホであるので、ここに書かれていることが正しいのか間違っているのかを判定するのは憚られる。しかし少し言わせてもらえば著者の書いている「科学っぽい事」は底が浅い。

たとえば木の最小の粒子は、燃えてしまえば煙や火に姿を変えるということです。

ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェ. 今、ここを生きる ──新世代のチベット僧が説くマインドフルネスへの道 (Japanese Edition) (Kindle の位置№1145–1146). Kindle 版.

火は物質の変化ではなく現象。一事が万事ではないが、こういった細かな間違いにより本書の信憑性が下がってしまうのは残念だ。

世界中の、第一線で活躍している科学者たちと交流がありながら著者が書くところの科学、それは「科学と宗教を語る新時代の僧侶」がいかにも好きそうな量子力学などであるが、本書にかかれている程度のことは第一線で活躍している科学者たちと交流がなくても、ブライアン・グリーンの「エレガントな宇宙」TVシリーズを見れば書けることばかりだ。要するに、底が浅いので「それっぽいことを言っているだけ」に見える。

しかし、この「科学っぽいこと」が書かれていなければ本書は単なる「坊さんの書いた本」であり、欧米の読者に受け入れられることは無かっただろう。

ところが、「本性」を最も印象的なかたちで見る者に訴えたのは、実はカルマパ十六世の死に際しての振舞いでした。(中略)
この三日間、彼の遺体を調べた医師たちの報告によれば、死後硬直は見られず、心臓のあたりには生者のごとく温もりがあったとのことです。二十年以上経った今日でも、遺体のようすについては医学的な説明がつかず、実際にそれを目撃した人々は、そのとき受けた強い衝撃をいまだに拭え

ヨンゲイ・ミンゲール・リンポチェ. 今、ここを生きる ──新世代のチベット僧が説くマインドフルネスへの道 (Japanese Edition) (Kindle の位置№3805–3819). Kindle 版.

科学かと思えば急にこんなオカルトめいた事を話す。「証拠は?」と言いたくなる。「聖母マリア像が涙を流す」と同じくらい信憑性のない話だ。

科学と仏教の共通点については、その科学側が「なめんなよ」と言いたくなるほど薄っぺらい一方、仏教側の記述も、まあ他の坊さんが書いた本で読んだな、といった程度。ただ自分でパニック障害を克服したエピソードは素晴らしい。

坊さんが仏教を語るとどうしても贔屓目になってしまうので、ここはキリスト教徒が一週間の瞑想合宿に参加したのをきっかけに仏教について進化心理学的に思索する「なぜ今、仏教なのか」をお薦めしたい。

--

--

Hiroki Kaneko
Hiroki Kaneko

Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

No responses yet