雇用者が求職者を非採用にして失業者を増やす分にはお構いなしなジイさん:ビッグイシュー372号

Hiroki Kaneko
9 min readDec 2, 2019

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ギグ・エコノミーに搾取される“自営業者”たち 『家族を想うとき』ケン・ローチ監督
ホームレス問題に対する社会的議論を巻き起こしたテレビドラマ「キャシー・カム・ホーム」(66年)から50年以上にわたり、ケン・ローチ監督は労働者や社会的弱者に寄り添う作品を撮り続けてきました。最新作『家族を想うとき』を通じて彼が憤慨しているのは、「働く貧困層」である非正規雇用の実態です。

(中略)

彼らのように単発または短期的な労働に寄って成り立つ労働市場は、近年「ギグ・エコノミー」と呼ばれ、「柔軟で自由な働き方」「収入アップの副業」としてポジティブに語られることも多い。しかし、労災保険の対象にならず事故や不具合が生じたときのリスクを背負い、不当な解雇にも繋がりやすく、労働組合が結成しにくいため団体交渉が難しいなど、さまざまな問題をはらんでいる。

フリーランスってそういうものなんじゃないのか?リスクがあるが単価が高いフリーランスと、リスク低めで単価が低い会社員と、どちらを選ぶのかは昨日今日はじまった事ではないでしょう。漫画家は出版社の社員なのか?

ローチたちは当事者たちの体験談を聞いて回り、作品に落とし込んでいった。「どの体験談も真実でした。数多くの実話を参考にしましたが、(映画のストーリーよりも)もっとひどい極限状態の話もありました。実に多くの人が非正規雇用の形で働いていて、このような仕事がもたらす搾取、ストレス、そして疲労がどれだけ深刻かを痛感しました。」

私は随分長いこと非正規雇用で働いていたけど、その後正社員になった。当時、自分には職務経歴も無く、そんな奴に正規の仕事が無かったのだから仕方がない。その後ステップアップできたのだから、非正規でも雇ってくれた雇用主には感謝している。
もし「全ての労働者は正社員として雇用しなければならない」なんて法律ができたら、雇用主はコストの関係で採用人数を減らすだろうし、そうなったら私は面接で落とされ、収入はゼロ、キャリアも積めず、路頭に迷うしかない。良かれと思った法律で困る人もいるのだ。そこをこの監督は理解していない。

「みなさんに知ってもらいたいことは、登場人物たちが不運でこうなったのではないということ。これは資本主義の機能不全ではない。むしろ正常に機能している状態、資本主義の成功です。雇用主が責任を問われることなく柔軟に調整できる労働力こそ、資本主義が望むものだからです。私はこれを変えるべきだと言いたいのです」

うえーんこのジイさん共産主義がファッショナブルだった時代のイデオロギーから変わっていないよ。スターリン時代のソ連や毛沢東時代の中国の方がマシだとでも言いたいのか。この映画監督はジイさんだけど、とんだ健忘症だ。資本主義経済で貧困から脱出した人の数と、社会主義経済で貧困から脱出した人の数を数え上げれば、どちらがより人を救ったのか分かることだ。物事の悪い面にしか注目せず、良い面は全て無視する。またはその反対。それが正常な判断だと言えるのだろうか。
自分自身はイギリスの経済発展の恩恵を受けている癖に、経済発展の元になった理屈を否定しているのだから「原発反対、でも電気使いたい」と言っている連中と同じだ。
産業革命以前のイギリスで、貴族と呼ばれる地方領主の下で働く農奴、貧者がどれほど貧しかったのか?または国から援助があったのか?それを考えれば産業革命以降の方がマシでは?
つまり問題は、アイディアAとBによって生活が上向いた人の数をそれぞれ数え、どちらが多いか判断し、良い方のアイディアを採用しなければならない。良い面だけ、悪い面だけ見る人は物事の50%しか見られていない。

働く時には各種保険があった方が良い!当然だ。皆がそう思う。しかしそのせいで職にあぶれる人がいるとしたら?

「正規に人を雇うと保険やらでコストが嵩むので沢山の労働者を雇えません」という雇用主の都合で職にあぶれる人がいても、彼らを採用しなかった責任は「雇用主が責任を問われることなく」ですけど、その辺りについてはどうお考えなんですかねカントク?

「搾取」って何だろう。安い給料でこき使うことか。給料の高低は分からないが、正規雇用だって、正社員になったからこそ転勤を断れず、結婚して、娘が生まれ、35年ローンで家を買ったばかりなのに「沖縄店へ5年間単身赴任してね。嫌なら会社辞めてね」と言われることは時間と幸福の搾取ではないのか?少なくともAmazon Flexではそんな事は言わない。家庭の事情があり、非正規雇用を続けている人もいるだろう。しかしそんな人が正規雇用になり、単身赴任したとしたら、どちらが幸せなのだろうか?

ヤマト運輸で正社員として働き、上司から殴る蹴るの暴力を振るわれるのと、暴力事件なんて起こしたら即刻クビのAmazonと、どちらが良いのか?

行政による福祉と、ギグ・エコノミーと、正規雇用と、それぞれ長所と短所があり、ライフステージに合わせてうまく使い分ければいい。それがギグ・エコノミーによる非正規雇用状態を何年も続けて、ステップアップできない、という状態に陥っている人がいるとしたら、それは行政の出番だろう。

ギグ・エコノミーは、少なくとも「やりがい搾取」はしない。「会社に滅私奉公しろ。妻が出産しそうな時でも出勤しろ」とは言わない。会社に忠誠も誓わせない。向こうが労働者を「利用」しているのなら、労働者だってギグ・エコノミー事業会社を都合の良いときだけ「利用」すればいいだけだ。奴隷ではないのだから、いつ辞めたって文句は一切言われない。

私に関して言えば、私の思春期からこっち、自己肯定感が低くて、しかもそれは自尊心の裏返しという困った中二病になっており、もし会社の面接などを受けて落ちたら生きてゆけない、と思っていた。恐ろしくて就職面接など行けなかった。そんな時に、面接無し、あまり人と関わらない仕事があったらどうだっただろう。真っ先に飛びついたはずだ。そして働きながら、次にどうすればよいのか考えていたはずだ。

Amazon Flexは本当に映画の通りなのだろうか?

もう一人は大手ネット通販の宅配を請け負うドライバーとして、機械のように働かされる夫のリッキーだ。「フランチャイズの自営業者」という名の下、荷物一個単位で報酬を得る出来高払い。全ドライバーと全荷物の行方がスマホのような携帯機器で常に監視・追跡され、時間内の配達を強いるため数分間のトイレ休憩さえ難しい。さらには「フランチャイズのルール」により一日でも休みを取れば制裁金を課される。起業に都合の良いルールが規定される一方で、荷物の紛失・盗難時は”自営業者”として賠償金を支払う決まりで、病気や怪我、家族の緊急時にもサポートはない。実態は発注会社のルールと携帯機器による管理に縛られている働き方だ。

これは映画だが、もしそんな職場が実際にあったら、すぐ辞めたほうがいい。
「携帯機器に縛られている」ねえ…。チャップリンの「モダン・タイムス」から頭の中は進歩していないのか。そういうセリフはスマホ見ながら道を歩いているバカに言えよ。あいつら自主的に縛られてるぞ。英語ではスマホゾンビ、中国語では低頭族と言うらしい。

上の動画はAmazon Flexで実際に働いている人の話ですけど、少なくとも映画のような印象ではない。というか、映画のようないわゆる「ブラックな職場」があったら今の時代、ネットですぐに広まり、働こうという人はいなくなるだろう。
話を聞く限りでは、映画のような「休んだら制裁金」ではなく「週48時間=1日8時間x週6日を1ヶ月続けたら報奨金10万円」が実態のようだ *2。これを「プラスの制裁金」とでも呼ぶのなら、あんたひねくれ過ぎてるよ。
アダム・スミスの「国富論」によれば、雇用主は自己の利益を上げたいがゆえに労働者を高待遇にしなければならず、安くこき使えば、労働者は待遇の良い職場に逃げてゆくという。しかしこれにはユヴァル・ノア・ハラリによる但し書きがあり、もしその雇用主が業界で独占的地位にあり、ライバル企業が存在しない場合、労働者は転職できない。ゆえに完全無欠の皆ハッピー理論ではない。
アメリカではAmazonは支配的地位にあるようだが、日本ではどうだろう?「Amazonが一番安い」神話はとっくに終わっていると思うので、国内にAmazon以外の小売業者が無くなる、という状態はありえないだろう。よって、Amazonが嫌ならとっとと見切りをつけることも可能だ。

とはいえAmazonお急ぎ便で翌日に荷物が届くのはやりすぎだし、そんなどうでもいい事で流通業者が疲弊しきっているなら、私は「お急ぎ便」は選択しない。私がAmazonで買い物をするときは、必ず「通常配達」を選択している。それだって注文の翌日には届くのだから、どうかしてるし、このささやかな活動が世界の苦痛を少しでも減らす役に立っているかどうかもよく分からない。

結論

ギグ・エコノミーは行政も企業も(構造上の問題で)救えなかった人々に収入の道をひらくことができる。今までの「雇用」の常識で考えるから悪いものだと思うのだ。子供にお使いを頼む度に健康保険と雇用保険と失業保険の加入が必要だろうか?ギグ・ワーカーから何年も這い上がれない人がいたら、その時のための行政ではないのか?
私はリバタリアン達を子供じみているとしてバカにしているが、同時に「資本主義は悪」という物事の悪い面しか見ない人間もバカにしている。

最後に

右翼も左翼もイデオロギーに頭をやられ、事実誤認をしていてエビデンスベースで判断ができないバカなので死ねばいい。ホームレスは生きろ!

*2 動画撮影時の報酬なので、今あるかどうかは分かりません。

追伸

英国、市民発の「テーブルトーク・ブライトン」 孤立した人々、世代を超えたおしゃべりを促す
ロンドンから南へ約1時間、ブライトン市内のカフェでは最近見知らぬお客さん同士の会話が増えました。その秘密は、いくつかの席に置かれた特製ポップでした。

これ、いいなあ。さすがに新宿駅前のマクドナルドではできないけど、「おしゃべりしましょう」ポップをテーブルに置いて見知らぬ人と会話を楽しむのは楽しそうだ。

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Hiroki Kaneko
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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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