電車内のコミュ力激高い女と新卒のクローン人間たち

Hiroki Kaneko
Jan 18, 2020

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Photo by Chang Hsien on Unsplash

きのう電車に乗っていたら、小田原の手前 — —富士フイルムとかメーカーが多くあるあたりの駅 — — から4人グループが乗車してきた。男3人、女1人。年の頃は30代だろうか。これから揃ってピクニックというわけでもなさそうな訳は、男の1人が革靴を履いていたからだ。フォーマルというわけでもアウトドアというわけでもない曖昧で小綺麗な格好をした4人は電車のドアの側に立ち、何事かわからない事を笑いながら話をしていた。彼らは日本人でもあろうし、話をしているのは日本語でもあろうし、私から2メートルも離れていない場所に彼らは立っていたのだが、会話の内容を全く理解できなかった。それでも楽しそうに話をする4人の中で唯一女性の彼女は、グループの話題をリードするでもなく、無視するでもなく、適切なタイミングで適切な答えを出し、適切なタイミングで笑っており、その完璧なタイミングとリアクションに私は圧倒されていた。何というか、「出来るやつ」なんだ。これは「頭がよい」という陳腐な意味だけではない。自分でシャツのボタンを掛けられないが数千年先のカレンダーを全て記憶している人間もいるからだ(あれは病気だけど)。
彼女はおそらく「幸運によって安寧な位置にスポッとはまり込んでいるラッキーガール」だ。それは本人の努力があるかどうかは分からないが、かなり運の要素が強いと思う。

自分の努力とは無関係に偶然、単なる幸運によって所得の高い国の所得の高い首都およびその周辺の、所得の高い親の下に生まれ、心身共に障害が無く、病的に痩せているとか太っているとか背がずば抜けて高いとかめちゃくちゃ低い、というわけでもなく中肉中背、統合失調症や自閉症や重度の鬱でもなく脳は正常で、ひどい不美人でもないどころか、整った顔立ちをしている。親がそこそこ金持ちであった為に受験システムをチートでき(裏口入学という意味ではなく、子の教育にコストを掛ける親がいるからこその勉強できる環境、時間、学習塾に通える資金があったという意味)、そこそこの給料をもらえる会社に入り、その会社は同じような境遇に生まれた人間ばかりなので話が合い…といったところか。日本の大手メーカーや大企業にありふれた光景のように — — それらの企業に部外者として16年も転々とした私は — — 思う。彼ら彼女らは大体において「上の命令をよく聞くいい子」なので特に問題も起こさないがイノベーションを起こせるわけでもなく、子供がどの学校へ行ったとか、株価がどうだとか、会社への不満、退職金はいくら貰えるのか、といったつまらない事しか発しない。例えば戦後の日本で、ソニーやホンダといったベンチャー企業が一躍大企業になると、安定を求めて後からこぞって入社してくるのがこういうお坊ちゃんお嬢ちゃん達だ。そしてイノベーターである創業者が死ぬと、途端にクソつまらない箱バンばかり作ったりし始める。彼らお坊ちゃんお嬢ちゃん達が安定した生活を送るために作った「作品」だ。
新技術の研究?スタートアップ企業から買えよ。製造?八千代工業に任せろよ。じゃあお前ら何をやっているのだと。下請けの尻を叩くだけの手配師が。

ああいう光景を見ると、自分が2000年代中盤に一瞬だけ部外者として居た、某関西メーカーの事業所、休憩室内での社員同士の会話を思い出す:「学校での授業の内容、俺はもう塾でとっくに習ったから先生の話なんか聞かずに友達とお喋りしてたら、その女の先生が泣き出して職員室へ戻っちゃってさあ」
その会社?ガラケーと共に死んだよ。あんな“優秀な社員”がいるのだから、仕方がない。社是に「共存共栄」と掲げられていたがアチラだけ栄えていたような気がした。。

私は色々ラッキーではなかったかな、と思う。というと「自己責任」という言葉の意味も知らない奴が、自分に不利な状況を跳ね除けて一代で財を成した立志伝中の人物を挙げて、お前には努力が足りないと言う。しかしそんな例外中の例外だけ見て残りの99%をなぜ無視するのか。
例えばソフトバンクの孫さんとか、イーロン・マスクなんかは間違いなく立志伝中の人物でもあろうけど、決して友だちになりたいとは思わないし、別に偉いとも思わない。しかし並外れた努力をしたと思うから、そこだけは尊敬する。努力という行為が偉いのであり、行為の主体が偉いわけではない。

大企業の新卒採用連中が入ってくる時期に、メーカーが集まっているJR南武線沿線の駅(たとえば駅前がタワーマンションだらけで有名な武蔵小杉とか)に降り立つとプラットフォームで面白い光景が見られますよ。こないだまで大学生だった若い男の子達が集まって何事か話しをしているのですが、スーツが皆黒なのはいいとして、服のように取り替えが効かない身長、体格、顔まで、クローン人間かお前ら、と言いたくなる、同じ背格好の連中ばかりですから。不自然でしょう?そこらを歩いている人間を数人、ランダムにピックアップして、それぞれの身長差が+-3cmくらいで収まる確率はどれくらいだ?これは企業の採用担当者が意識的か無意識的か「まともな人間というのは身長○○cm くらいで、所得の高い国の所得の高い首都およびその周辺の、所得の高い親の下に生まれ、心身共に障害が無く、病的に痩せているとか太っているとか背がずば抜けて高いとかめちゃくちゃ低い、というわけでもなく、統合失調症や自閉症や重度の鬱でもなく脳は正常で、中肉中背、ひどい不美人でもなく、受験システムをチートでき、都内在住の金持ちのご子息ご令嬢しか居ない有名大学を卒業するものだ」だと思って選択した結果だからだ。ああそうだ、付け加えておくと「外国人ではない」というのも重要ではないのか。ひどい差別に聞こえるけど、日本の企業は「能力の高い人間を雇ったら、たまたま外国人だった」という採用ができていないのだから仕方がない。都内のITスタートアップ企業だったら求人をスタック・オーバーフローあたりで行うからそのような採用ができていると思うけど、新卒一括採用的な歴史ある大企業やメーカーはやらないだろうな。この「優秀な才能を世界中から集めてくる」ことができるからこそ今のアメリカの繁栄があるのであり、アメリカ以外の全ての国が人材集めに失敗している理由でもある。

上述の「まともな人間」であり、某有名メーカー正社員として採用された某氏はWebシステムを下請けプログラマー共(私のことだ)に任せる際、「画面をスクロールしたらトップのメニューバーが見えなくなるから、同じものを画面下にももう一つ用意しよう」と言い放ったのですが、さすが有名大学を卒業する人は言うことが違う。その方はとっくに退社されましたが、辞めて正解でしょう。下請けというのはこういう残念なクライアントの言うことも聞かなければならない辛さがあります。そして最初のうちは「まともなWebアプリのUIデザインとはどういうものか/あなたは同じメニューバーが上にも下にも付いたWebアプリを今まで見たことがあるのか」と説得に掛かるのですが、そのうち諦めて言われるがままに実装する、ただの御用聞きになります。私も直近はそんな感じだった。日本のアイテー産業は彼ら優秀な人達に任せます。

大企業は、ある「型」にはまった人間が欲しいのだそうです。それでイノベーションを起こせているのかどうかは知らない。変化することにインセンティブが無いのなら、ゆっくり沈んでいくだけだとは思う。私が企業の採用担当だったら「自分でシャツのボタンを掛けられないが数千年先のカレンダーを全て記憶している人間」を雇うけど。何もしなければ沈むだけだと分かっているなら、「いわゆる普通の人間」を雇ったって仕方がない。そんなレインマンを1人と、その人のお世話係のアルバイトを1人雇う。クローン人間は、そんなアルバイトでいいんじゃないか?
しかしそのような採用の仕方を、大企業の採用担当者がするわけがない。何か不祥事でもあったら、採用した自分の責任になってしまうからだ。結果、変化にインセンティブが発生せず、「変わらないこと」にのみインセンティブが発生した結果、大企業も役所も何も変わらない。そりゃそうだ。私だって銀行に35年の住宅ローンがあったら同じ事をするね。

時代とともに変遷する「美の基準」という「型」にハマると、ファッションモデルとかアイドルになれます。
ラッキーな環境に生まれると、大企業に就職して、そこそこ安定した生活を送れます。

努力って大切だね。

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Hiroki Kaneko
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Written by Hiroki Kaneko

自営業のソフトウェア技術者。Airbnb TOP5%ホスト。サイクリングと旅行が趣味。

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